【アビスパ福岡講演】日本発のスポーツDAOを運営するアビスパ福岡
アビスパ福岡が日本初のスポーツDAO「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」をリリースしたのは2023年のことだ。アビスパDAOではクラブもいちステークホルダーとなり極力自律分散型組織を目指しており、クラブが発行したトークンを買った人が意見やアイデアを出したり、意思決定に参加したりできる。
担当のアビスパ福岡の平田剛久氏は「スポーツクラブはファンの方を中心に熱量のあるステークホルダーが関わって成り立っていることが特徴です。熱量の高いコミュニティーを生かすための仕組みを考えた結果、Web3にたどりついた」と導入の舞台裏を明かす。コロナ禍での無観客試合や入場制限の影響で生じた「ファンサポーターとのリレーション維持・発展」「試合以外での事業化」といった課題に加え、クラブの戦力を確保・強化するための資金力の問題を抱えていたアビスパ福岡は、これらを解決するために「クラブ以外のさまざまなステークホルダーと事業を作る必要がある」と判断。クラブ内で必要としているもののリソースが足りていない事業を共創したり、プロジェクトを提案したり…と、トークンを保有しているユーザーとともに組織を作り上げる狙いがある。
ファンの熱量を、トークン購入を通して定量化
トークンの特徴として、買う人が増えれば価値が上がるという点が挙げられる。プロジェクトが大きくなればなるほど保有しているトークンの価値が上がり、逆にDAO内のコミュニティーで荒らし行為やヘイト行為を行う人がいればその価値は下がる。「トークンがあることでDAO内では積極的な意見が多く、建設的にクラブをどう良くしていくか、課題を解決していくかという議論が活発に起きています。」と平田氏は言う。クラブ運営にボランティアで参加するのではなく、トークンを購入した保有者として関わることがモチベーションとなり、熱量の高さを維持できるのだ。
一方で、クラブが企画したプロジェクトにDAOメンバーが参加するという図式のままでは従来の組織と変わらないままになってしまうという懸念もあった。そこで、スタジアムの設備やチケットの価格などクラブの介入が必要になる「クラブが関わるプロジェクト」と「クラブが関わらずDAOメンバーのみで自走するプロジェクト」の2種類を設けることに。アイデアや意見の投稿がより活発になり、ファンの声を経営の意思決定に反映させることができるという。平田氏は「これがファンの熱量を仕組み化するうえでの大きなポイント」と解説。クラブ・スタジアムをよりよいものにしたいという熱意やクラブへの愛着がトークン購入を促し、その結果、これまでリソースを割けずにいた新規プロジェクトのイノベーションやスタジアムの体験価値向上つながっているという。
Web3がスタンダードになった世界を見据える
平田氏が見据えるのは、Web3を活用した体験型コンテンツのさらなる発展だ。「世界的に有名な『マンチェスター・シティFC』はソニーとのメタバースプロジェクト構想を発表しました。スタジアムをメタバース化し、VRを使うことで世界中どこにいてもスタジアムを体験できるプロジェクトです。デジタルの波がきたときにすぐに対応し、イニシアチブをとることをめざしています。
世界中のファンにチケットやアバター、デジタルのグッズの製作などを買ってもらうこと事業規模を拡大でき新しい体験価値を創ることができる。デジタルの上でアビスパブランドを作り、クラブもファンもすぐに対応したい」と意気込む。“デジタル慣れ”したファンの熱量が国境を越え、他国のサポーターを圧倒する日がもうすぐそこまで来ているのかもしれない。
【BOKURA講演】ファンを分析することで、企業の長所も短所も見えてくる
BOKURAは2015年に創業以来、300社以上のクライアントの“ファン創り”にコミットしてきたファンマーケティングのプロ集団だ。この日は代表取締役の宍戸崇裕氏が登壇し、講演を行った。
ブランドや製品に“ファン”がつく要因はさまざまだ。例えば商品やサービスそのものの利便性や価値、はたまたカリスマ経営者やショップ店員、金額、費用対効果、歴史…。枚挙にいとまがないが、これらの要因が多ければ多いほど、単なる顧客からファンになりやすいだけでなく、浮気もされづらい。そしてファンマーケティングを効率よく行うためには、その指数を「愛」「知識」「売上」「推奨」の4つの項目で測定し、自社のファンのレベルを理解することや、足りていない要因について分析することが肝要になってくる。また、その分析結果をもとに弱い要因を強化するための施策を打ち出せば、新たなファンを創出することも可能だ。安定的な売り上げにつなげられるだけではなく、SNSでの自発的な発信を誘ったり、従業員のモチベーションを向上させたりと、メリットだらけだと宍戸氏は強調する。
同社はファンマーケティングのコンサルティングや運用代行、費用対効果の明示など、ファン創りには欠かせないサービスをさまざまな角度から提供している。また、ファンを管理するためのシステムも開発。顧客、売上データとアンケートデータ、さらにSNSアカウント情報、コミュニケーションログの情報を合わせてデータ化し、マーケティング活動にさらに役立てることができるという。
「神対応」と一言で片づけることなかれ
「忘れられない神対応」こそがファンをつくる。そう主張する宍戸氏は、“神対応”の事例として老舗製薬会社を紹介した。SNS活用に課題を感じていた企業に対し、SNSの活用により注力するようにアドバイス。X(旧Twitter)上に投稿された製品についての不満や疑問に対し、公式アカウントから丁寧に返信をする方針を打ち出した。また、製品を多く使用しているユーザー(=ファン)に対して感謝状を贈るなど、肯定的・否定的にかかわらず、積極的なコミュニケーションを実行するように。また、製品について投稿しているアカウントとそのユーザーについて分析してファン度数を計測。そのスコアが高い人だけを招待したスペシャルイベントや、ファンと担当者が一緒になって考えるノベルティ企画など、すでにファンになっている消費者のロイヤリティーをさらに高めるための施策も効果的だという。
神対応とは「工数」「タイミング」「表現」「対象が実際に行動した」「心が動いた・共感した」といった5つの要素からなるものだと宍戸氏は定義している。これらに共通しているのは、やはりペルソナから外れている可能性のある顧客やユーザーにとっても心に残る対応であるという点だろう。
ただSNSを運用するだけではなく、ファンの投稿に対して積極的にコミュニケーションをとることは、こうしたペルソナ外の消費者を巻き込み、ファンをつくり出す可能性を秘めている。ファン自身の売り上げや、ファンの推奨によるその友人・知人の購買などが積み重なれば、1年目に100人のファンをつくることで3年間の合計売上貢献額は2,000万円以上にもなると言われている。
ファンマーケティングにおいて、SNSとは「拡散させるためのツール」ではなく「ファンと距離を縮めるためのツール」であることを念頭に置いて運用すべきだろう。
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