広告市場においてはインターネット広告が今も成長を続けている。その一方で、近年はマスメディア企業のDXの強化、それに伴う新たな広告商品の開発が進んでいる。そんな環境における、各主要メディアはどのような戦略を描いているのか、主要プレイヤーに見解を聞く。
本記事は月刊『宣伝会議』2024年5月号に掲載の「メディア企業に聞く広告営業戦略」記事を転載したものです。
1月の動画再生数は4億回超え パリ五輪配信でユーザー増を狙う
民放公式テレビ配信サービス「TVer」は、4月1日付で広告営業組織の改編を行い、営業部門を業務内容で2組織に再編。ひとつが営業部で、フロント営業の役割を担い、新規クライアントの獲得を中心に活動するチームである。もうひとつがカスタマーサクセス部で既存クライアントの事業成長に資する提案を行い、広告運用も担当する。
最近の同社の広告営業活動の方針について、TVer 執行役員 広告事業本部長の古田和俊氏は「サービス利用者が拡大していくなかで、広告に関しても、販路を拡大することができ、クライアントソースを大きく広げることにつながっている。多様な業種での広告活用が進む中で昨年、セルフサーブ機能の提供を開始した。これまでTVer側が行っていた配信設定に加え、入稿から配信、レポーティングまでを広告会社が行うことができるようになった。こうした取り組みを通じ、TVer広告をより手軽にかつ効率的に運用できるようになっている」と述べる。
TVerは2024年1月の月間動画再生数が4億回を超え、月間ユーザー数も3500万MUBと過去最高を更新した。こうした利用の拡大の中で、同じく増えているのがコネクテッドTV(CTV)経由での視聴だ。現在は全体の約3割がCTV経由の視聴だ。
「放送局由来のコンテンツが大半なので、もともと大画面のテレビデバイスとの相性が良いと思う。かつ広告商品を見た際にも、テレビデバイスで視聴されることで、価値が高まると考えている」と古田氏は話す。
実際、CTV経由の視聴ではいくつかの特長が見えているという。ひとつが1世帯当たり平均1.7人で視聴されていることで、家庭の中で複数名により視聴されている様子がうかがえる。
その他、画面の注視率が高いことやテレビデバイスで流れても、デジタル広告であるので、TVerが保有する1st Partyデータを使ったターゲティングが可能な点などがあげられるという。
同社では3月よりフジテレビで「すぽると!」が復活することに合わせて、デイリースポーツ番組「すぽると! on TVer」の配信を開始している。同番組提供の狙いとしては有益な情報を届けることによって毎日の視聴を目指すと同時に、広告商品としても活用することだという。
今年の夏はパリ五輪の配信も予定しており、「同番組でオリンピック機運を盛り上げていきたい」と古田氏。さらに今後について同氏は「クライアントが私たちに期待することをしっかりキャッチアップして、こちらから積極的にコミュニケーションをとり、営業活動に活かしていくとともに、新たなプロダクト開発もしていきたい」と展望を語った。
TVer
執行役員 広告事業本部長
古田 和俊 氏
2002年、フジテレビジョン入社。営業局スポット営業部、ネット営業部、デジタル営業部を経て、2020年にTVer出向、広告営業部長。2022年7月より現職。