福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」は3月、刷新した「かいじゅうアイランド」を周知するため、動物たちを間近で見られるという体験価値を「ズンズンペンギン」「ヌンヌンアザラシ」と表現したプロモーションを展開した。
間近で楽しめる施設の特色をアピール
今年で開業35周年を迎える福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」は、3月19日にペンギンやアザラシなどがいる「かいじゅうアイランド」をリニューアルオープン。新エリアとして、360度全方位からアザラシのショーを楽しめる「アイランドステージ」、ケープペンギンが歩く姿を間近で鑑賞できる「ペンギンビーチ」を開設した。
プロモーションを企画した西鉄エージェンシーの天野栞奈さんは「福岡市の方を中心に、リニューアルオープンを周知することが目的でした。新エリアによって動物たちをかなり間近で見られるように。もともとペンギンが自由に歩き回る姿が人気で、その特徴を活かして“動物をブランド化”しました。歩き迫って来る様子を『ズンズンペンギン』、合わせて『ヌンヌンアザラシ』とネーミングしました」と話す。
本企画はオープン前の3月上旬から屋外広告やテレビCM、新聞広告、ラッピングバスなどで展開。オープン当日には、来場者にオリジナルステッカーも配布した。
屋外広告は西鉄福岡(天神)駅などの福岡市内の主要駅や近隣施設に掲出。「場所ごとのコミュニケーションにこだわり、福岡駅は迫力ある広告ジャックに。駅の通路では歩くたびにペンギンが1匹、3匹、5匹と迫るようにしました。水族館の直通バスが停まる郵便局前には、『水族館までバスだと約40分、ズンズン(ペンギン)だと約9時間 ※すごく頑張った場合』と案内板のようなデザインにしました。」(天野さん)。
動物のシュールさと王道感を出した広告
広告のグラフィックは全て撮り下ろしとなっている。「あえて動物だけのグラフィックにしています。陸地の芝生やプールの写真を入れる案もありましたが、デザインの作為的な感じを出さず、ペンギンの姿がすっと入ってくるように制作しました」(マッハプロダクション アートディレクター 榊雄介さん)。
写っている動物は、目線が合うカットや目を閉じたカット、変なポーズをとっているカットなどさまざまだ。「生き物ならではの愛らしさ、シュールさを意識しました。屋外広告にはコピーを入れず、ズンズンってなんだろう?と不思議な印象を与えることを狙っています。地元の人たちに愛されてきた王道感も出したいため、奇をてらいすぎないバランスにこだわりました」(天野さん)。
福岡の民放テレビ5局では、3月中にペンギンとアザラシの2種のテレビCMを放映した。ペンギンが歩く姿、アザラシが泳ぐ姿とともにそれぞれ「ズンズン~♪」「ヌンヌン~♪」と歌う音楽が流れる。音楽はテレビ東京の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』のオリジナル楽曲などを作曲した音楽プロデューサーの樋口太陽さんが担当した。
「エンタメらしい、子どもが真似したくなるような中毒性のある音楽にしました。歌声は大人と子どもの2種あり、子どもの歌声のバージョンは帰宅時間帯の夕方などに放映しています」(西鉄エージェンシー クリエイティブディレクター 近藤純さん)。
オープン当日に配布したステッカーは、飼育している全27羽のペンギンを写した27種。各個体の性格や特徴から「癒し系」「爆モテ」などの異名を付けた。
「一連の展開はブランドネームのように広がり、SNSでも『ズンズン』『ヌンヌン』を使った投稿が見られました。学校では子どもたちがCMの歌を真似しているという話もあり、手応えを感じています」(天野さん)。