DKSH、ヤッホーブルーイング、ユー・エス・ジェイ、LIFULLのマーケターが語る、顧客の潜在ニーズを探り、アプローチを広げる戦略とは?

  • 【出席者】
  • DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン 酒井久美子氏
  • ヤッホーブルーイング よなよなピースラボUnit ユニットディレクター 佐藤潤氏
  • ユー・エス・ジェイ マーケティング本部 副本部長 浅井行代氏
  • LIFULL 執行役員CCO / LIFULL HOME'S CMO 川嵜鋼平氏
写真 人物 集合 写真左からヤッホーブルーイング よなよなピースラボUnit ユニットディレクター 佐藤潤氏、LIFULL 執行役員CCO / LIFULL HOME'S CMO クリエイティブ本部 本部長 川嵜鋼平氏、DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン 酒井久美子氏、CMO X Founder加藤希尊氏、ユー・エス・ジェイ マーケティング本部 副本部長 浅井行代氏
写真左からヤッホーブルーイング よなよなピースラボUnit ユニットディレクター 佐藤潤氏、LIFULL 執行役員CCO / LIFULL HOME'S CMO クリエイティブ本部 本部長 川嵜鋼平氏、DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン 酒井久美子氏、CMO X Founder加藤希尊氏、ユー・エス・ジェイ マーケティング本部 副本部長 浅井行代氏。

顧客とブランドとの接点を生み出すための戦略とは?

2014年11月より活動を開始したCMOのコミュニティである「CMO X」。2024年3月に開催された第35回研究会では、DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン、ヤッホーブルーイング、ユー・エス・ジェイ、LIFULLのマーケターが集い、各社が取り組んできた戦略や課題などを共有した。

研究会は各社の想定するカスタマージャーニーやUSP(独自の強み)の発表から始まった。

テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営するユー・エス・ジェイでは、「NO LIMIT!」をスローガンとして掲げており、浅井氏は「限界のない超刺激を与えることで、来場者の心を開放すること」が体験価値だと語る。また、多くのゲストからのコメントの内容確認やSNSのトラッキングのみならず、日々数百名の来場者からアンケートを集め、膨大な量の顧客の「声」をもとに来場者のニーズを探っているという。

写真 人物 個人 浅井行代氏

不動産・住宅情報サービスを提供するLIFULLでは、「利他主義」を社是として社会課題解決に取り組む事業を展開している。そのひとつがLIFULL HOME'S「FRIENDLY DOOR」という取り組み。在日外国人や高齢者といった家を借りることにハードルがある住宅弱者と不動産会社をつなぐことで、誰もが安心して住まいを見つけることができるサービスだ。また、不動産情報ポータルサイトでは、自然災害に関するハザード情報の掲載や、おとり物件撲滅に向けた取り組みも実施。川嵜氏は「事業投資やM&Aにおいても、“社会課題の解決につながる価値観かどうか”を重視している」と話す。

写真 人物 個人 川嵜鋼平氏

流通や販売、マーケティングなどのサービスを包括的に行うDKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの酒井氏は、同社で取り扱っているドイツの高級筆記具ブランド「LAMY」のマーケティング戦略を中心に紹介。同ブランドの商品は筆記具ではあるものの生活必需品ではなく嗜好品にあたり、競合も少なくないため、顧客が購入に至るまでのステップが多いという。そこで、直営店や卸し先店舗の販売員の教育制度を徹底し、名入れなどのパーソナライズサービスによる付加価値の創出やアフターサービスに力を入れている。特に購入後のサポートはリピートにつながりやすいため非常に重要だと説明した。

写真 人物 個人 酒井久美子氏

クラフトビール「よなよなエール」の製造・販売を行うヤッホーブルーイングの佐藤氏は、顧客のよなよなエールに対する“ぞっこん度”をKGIとして設定。そして「売上と利益は後からついてくるため、まずは徹底的に商品を好きになってもらう」という考えのもと、ブランドコミュニケーションを優先して行っているという。実際に“ぞっこん度”のランクが高い顧客は商品の購入金額割合が大きく、商品への理解度も高い。そのため、そういった顧客には自ら会いに行き、カスタマージャーニーを直接確認したり、アイデアをヒアリングしたりしていると話す。

付加価値をつくり、顧客の認知・想起を促す

続いて、各社の抱える課題と、解決のためのマーケティング戦略の方針について話し合った。

川嵜氏は、住宅弱者問題の認知率の低さを課題として挙げた。外国籍の人や高齢者に対する先入観を払拭できていない企業や、住宅弱者の存在を認知すらしていない不動産会社もあるという。そこでLIFULLでは、住宅弱者となる当事者に部屋を借りる際の悩みをヒアリングし、その内容を調査PRとして生活者や不動産会社に周知することで、業界内の住宅弱者問題の認知率向上と当事者の利用意向を高めることを図った。これに対し、浅井氏は「近年はCSRを重視する若い人が多いため、こういった活動はどんどん増えていくべき」と賛同の声を挙げた。

ヤッホーブルーイングでは、「クラフトビールといえばよなよなエール」と第一に想起してもらうことを目標としている。そのためには顧客が商品を想起するタイミングを計ることが重要だと考え、LIFULLと同様に「お客さまに直接会って、よなよなエールをどんなときに飲んでいるかを聞くしかない」と話す。

写真 人物 個人 佐藤潤氏

ペーパーレス化と輸送費の高騰による輸入品販売の障害が課題だと語ったのは酒井氏。「書く」という行為が減少し、さらに為替も不安定ななかで、筆記具の輸入品販売を発展させていくためには、やはり付加価値をつくり出すことが必須だと語る。

浅井氏は「パークにとって人口減少が一番大きな課題である」と話す。特に首都圏に比べて人口の少ない関西圏では、トライアル顧客だけでなくリピート顧客の囲い込みが急務であるため、シーズナルイベントなどに注力している。また、旅行代理店などと連携して、大阪観光という大きな枠で考えていくことで、遠方からの集客を積み上げようとしているという。

写真 人物 個人 浅井行代氏
CMO Xの研究会では、自社の商品やサービスの体験価値が伝わるものを持ち寄り、互いのブランドを共有して議論を重ねていく。

他業界だからこその視点で、戦略を考案

研究会の最後は、それぞれのマーケターが「他の参加企業のCMOだったら、どんな戦略を考えるか」というテーマでトークを展開。

佐藤氏は、BtoC事業が軸となっているLIFULLにBtoBのつながりを作ることを提案。空き家のオーナーや自治体などとナレッジを共有することで、顧客とのミスマッチの抑制や、LIFULLに加盟している会社同士でデータベースを作成することにも結び付くと話す。

付加価値の創出が求められているDKSHに対し、浅井氏は「高級商材はストーリーがないと付加価値が生じにくい」と指摘。親和性のあるブランドストーリーがあることで、見込み顧客層との接点が生まれ、商品単体としてだけでなくブランドとして好きになってもらいやすいと語る。

酒井氏はユー・エス・ジェイについて、テーマパークに訪れるとっかかりが必要だと考えた。「文房具業界では、“文具女子”というメーカーサイドも想定していなかった顧客層が押し寄せたことがあり、イベントでの勢いがすごかった」と実例を話し、それをもとにグッズなどの限定販売イベントを提案。「パークに来るきっかけが何かしらあれば、『今度はパーク目的で来てみよう』という新たなリピーターが増えるかもしれない」と期待を語った。

川嵜氏は各社の課題を踏まえた上で、具体的なアイデアを考案。ヤッホーブルーイングについては、マーケットがコモディティ化しており、価格差が生まれにくいことを課題として挙げた。そこで、富裕層向けの会員制クラブを創設し、プレミアムなよなよなエールを会員に提供することで、ブランド価値を高めるのはもちろん、狭くて深いビールコミュニティを構築できるのではと提案。佐藤氏は「そういったプロダクトアウトを楽しんでくれるお客さまも多いので、ぜひチャレンジしてみたい」と、議論が盛り上がった。

3時間以上におよぶ研究会の最後に、「CMO X」Founderの加藤希尊氏は「本研究会のビジョンである『マーケターの集合知をつくる』を実現する、有意義な時間になったと思う。今後もマーケティングの力で日本の成長力を生み出すため、ネットワークを広げていきたい」と話し、本研究会を締めくくった。

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