日清製粉グループは、3月30日から同グループの企業広告となる新たなテレビCMを開始した。
「線路は続くよ、どこまでも」の音楽に合わせて、家で子どもが家族と一緒にパスタを食べているところが映しだされる。そしてカフェで男性が手にしているサプリメント、友人とお出掛け中の車中で女性が手にしている化粧品、ベンチで昼食を楽しむ2人のサンドイッチ、ビルの屋上で一息ついている人が手にしているパン、そのビルに設置されているソーラーパネルと、シーンは変わる。一見するとつながりがないように見えるこれらのものは、同社グループの事業が支えているものだ。メッセージは、「なくてはならないものだけ、つくっている。The Base of Life」。
日清製粉グループは、2001年に全事業部門を分社化し、純粋持ち株会社制へ移行。赤いリボンマークを基調にした企業広告など、グループブランディングを実施してきたが、グループの事業内容や、それらが社会に貢献していることを十分に顧客やユーザーに伝えきれていない状況にあった。そのような中で、浮かび上がった課題が「企業が社会における役割を持った存在として見られる時代において、グループとしての存在をどのように、何から伝えていくべきなのか」(日清製粉グループ本社広報部)ということだった。
ブランディングを担当したクリエイティブチームがまず実施したのが、ステークホルダー調査だ。現状を把握すると同時に、日清製粉グループの各社(日清製粉グループ本社、日清製粉、日清製粉ウェルナ、日清製粉デリカフロンティア、日清ファルマ、日清エンジニアリング、オリエンタル酵母工業、NBCメッシュテック)の社員と「対話」していくことから始めたという。
「日清製粉グループの会社の企業文化はどうかとか、強みは何で、弱みは何なのか、日清製粉グループにどうなってほしいかなど、会社の垣根は取っ払い、人間対人間の関係で、根掘り葉掘り聞いていきました。そして、僕らが考えている『日清製粉グループは何者か?』の仮説などもその場でぶつけていきました。ヒアリングというより、一緒に『ブレスト』する感覚です」(クリエーティブディレクター 吉川隼太氏)
日清製粉グループとは何者か?について議論する中で、社員から頻繁に出てきた言葉は「下支え」「ベーシック」「ベース」「支える」「必要不可欠」「なくてはならない」など。言葉は違えど、似たような概念の言葉がたくさん出てきたのだ。
「どういうことか?を話す中で、なぜそういう言葉がよくでてくるのか理解できました。日清製粉グループは、小麦粉という主食の原料の製造からはじまり、パスタなどの加工食品、パンづくりに必要なイースト、中食・惣菜、そして、健康食品や診断薬原料、ソーラーパネルや車の車載フィルター、スマホなどに使われるメッシュクロスなど、事業は多岐にわたっています。でも、それらはすべてが、人間にとって『なくてはならないもの』であるということ。そこにこだわっているのが日清製粉グループで、そこがすごい。なるほど、日清製粉グループとは、単純な食品カンパニーではないのか。時代ごとに変わる、人が生きるために『なくてはならないもの』を探し、支え、当たり前なものへと変える。そんな、責任と勇気の繰り返しで成長してきた企業なんだ、ということが発見でした」(吉川氏)。
結果、「The Base of Life」カンパニーという言葉を、日清製粉グループの社会の中での役割として定義した。
「僕らが提案した言葉というより、日清製粉グループの社員のみなさんとの対話から紡ぎ出された概念であり、言葉です」(吉川氏)
パンやパスタから、化粧品、ソーラーパネルまで。実は幅広い日清製粉グループの事業。CMでは、一見つながりがなさそうに見えて、実は小麦粉や小麦粉づくりの技術がベースになっていることを伝える。
「派手さはないけれど、日々を確実に支えている。一部の人にしか手が届かないものではなく、すべての人に手が届くものにこそ価値があると信じる。インタビューで浮かび上がってきたそんな思想を、『なくてはならないものだけ、つくっている。 The Base of Life』という言葉に込めました。『なくてはならないもの”だけ”』とあえて限定した言い回しにすることで、企業の意志と覚悟を表現しています。CMもグラフィックも、この言葉をいかに体現していくかをベースとしています」(コピーライター 小川祐人氏)
CMでは「小麦粉や小麦粉づくりの技術」でつながっているというダイナミズムを、日常の温度感を大切にしながら描いている。
「単なる事業紹介を超えて、広告を見た人にいかに自分たちに関わることとして感じてもらえるか。奇抜さや押しの強さよりも、企業としての普遍性を表現できるよう努めました」(小川氏)
CMに先立ち、3月1日に出稿した新聞のグループ連合編30段広告は、パンをほおばる赤ちゃんの顔にメッセージが入っているというシンプルな構成だ。
「人が生きていく上でその根幹となる食糧の、さらに根幹を担う穀物を扱っている日清製粉グループ。グループ会社の皆さんに話を聞いていく中で、その根幹を担う『責任感』という言葉がどの会社からも共通して聞かれるお話でした。『The Base of Life』はまさにその責任感を孕んだ言葉です。その『The Base of Life』をパンを食べる赤ちゃんで表現しています。これまでの、そしてこれからの人類の生きる根幹を支えていくという強い意志を表現できればと思って制作しました。そしてこの意志はグループ連合編だけで終わらず、各グループ会社のさまざまな事業の表現へと展開していきます。小麦を製粉する技術は、食品だけでなく化粧品、自動車のフィルター、ソーラーパネルに至るまで幅広い拡張を見せています。これから、その根底である『The Base of Life』の思想と、事業拡張のダイナミズムを伝えていければと思っています」(アートディレクター 塚本哲也氏)
続いて3月29日には、事業会社の1社目として日清製粉の新聞広告を出稿。今回、2024年度をかけて残り6社、合計8社のグループ全てを「グループ連合」としてブランディングしていく壮大なプロジェクトになっている。
今回のブランディングプロジェクトは、各事業会社にとって今までにない取り組みである。しかし、グループ本社および全事業会社の社員とディスカションをしながら生み出した考え方と言葉であることから、社員からは、「自分たちが考えていることはこれだ」という声が広報部には寄せられているという。
同社では、「The Base of Life」のスペシャルサイトもオープン。4月からは、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」の枠内でグループのテレビCMをオンエアしている。
スタッフリスト
共通
- 企画制作
- 電通+太陽企画
- CD
- 吉川隼太
- C
- 小川祐人
- AD
- 塚本哲也、山田清勢
- CPr
- 栗川愛子
- BP
- 上村達也、鹿川耕治郎、埋橋奈緒、松野晶子
CM
- 企画
- 小川祐人
- Pr
- 片桐広基、大石基紀
- PM
- 櫻井優歌、日下恭葉
- 監督
- 柘植泰人
- 助監督
- 金子直樹
- 撮影
- 木津俊彦
- 照明
- 西ケ谷弘樹
- 美術
- 小林蘭
- ST
- 藤井きえ
- HM
- 工藤あき
- フードST
- 則武誠子
- ロケCo
- 國ヒロ
- 編集
- 今村徳孝(オフライン)、沼田健作(オンライン)
- ミキサー
- 浅田将助
- 音楽
- 戸波和義
- ボーカル
- 佐藤良成(ハンバート ハンバート)
- 作詞
- 渡邊優
- アレンジ
- yuma yamaguchi
- CAS
- 中村裕之
- NA
- ザン ヨウコ
- 出演
- よはく、橋本望、宮原俐々帆、安本卓史、Mariko、内野七星、奥村秀人、MISAKO、宮田稜
グラフィック(グループ連合編 30段)
- デザイナー
- 中村有希、寺西安奈、 野中栞
- プロダクションPr
- 川島光晶
- Pr
- 池田了
- アシスタントPr
- 永井聖香
- PM
- 吉田萌音
- 撮影
- 横浪修
- レタッチ
- 津金卓也
- ベビーハンドラー
- 野田純子
- フード
- 中居万寿美
- CAS
- 永原恵太
- 出演
- レン イシカワ
グラフィック 日清製粉編(15段)
- ヘアメイク
- 茅根裕己
- キャスティング
- 永原恵太
- ロケCo
- 近内陽佑
- フード
- 中居万寿美
- 仕掛け
- 間幸久
- 出演
- 宮田稜