※本記事は月刊『ブレーン』2024年5月号「長く愛される企業になる広告・デザイン」に掲載している内容から抜粋しています。
詳細・ご予約は《こちら》 ※Amazonページに移行します。
広告はブランドをつくる
シリーズの前身は、2006年から始まった企業広告シリーズ「ガス・パッ・チョ」だ。
「当時東京ガスは、ガスコンロや給湯器など、家の中で使う製品ごとにそれぞれ異なる広告を展開していました。しかし本来、CMを含む広告はブランディングの一環で、ブランドをつくっていくものであるべきです。そこでまず、各製品を束ねる『ガス・パッ・チョ(ガスで、パッと明るく、チョっといい未来)』のシリーズをつくりました」(電通グループ 澤本嘉光さん)。
妻夫木聡演じる主人公の元に織田信長や千利休、ガリレオなど歴史上の偉人が訪れ、ガスがある今の時代の豊かさを描いた。
「このシリーズで東京ガスの『人格』ができてきた気がします」と澤本さんは振り返る。
それと並行して、澤本さんは2007年頃に、東京ガスが以前より注力していたラジオCMに着目し自主提案をした。
「東京ガスさんはラジオ番組を持っていて、商品別のラジオCMにも力を入れていたんです。僕はラジオCMでも何かブランドづくりに繋がるものができないかなと考えていて。それまでのラジオCMの舞台は、基本的には家の中で家族という単位で起こることが題材でした。そこからもう一歩踏み込んで、東京ガスの製品やサービスがどんなふうに人の生活を良くして家族を温めているか、家族をテーマにしてラジオCMをつくりませんか、と提案したんです」。
最初はチャレンジとして企業を主語にしたCMがつくられたが、それを1年間流したところ、反応がかなり良かったという。そこからテレビCMとしても放映できないかと話を膨らませていった。
「そのためこのシリーズは、ラジオCM、つまり字コンテが始まりだったということです。今にまで続く一人称で語り口調のCMは、ラジオCMを映像化するような字コンテが起源にあります」(澤本さん)。
1年間繰り返し見られる耐久性のあるCM
最初につくられたCMは、「家族の絆 山菜の味」篇(2008年)だった。孫の視点から、認知症になってしまった祖母との関係性の変化を描いたものだ。それから2019年まで毎年1本、「家族をつなぐ、料理のそばに。」というコピーの元、家族をテーマにした90秒のテレビCMシリーズをつくり続けている。
「料理」という切り口としたのは、ガスから連想されやすく、家族の生活とも密接に結び付いているからだ。
「料理を通じて、家族の真ん中にあるものをずっと探り続けてきました」と澤本さん。CMは毎週土曜日朝9時30分からの『食彩の王国』(テレビ朝日)で放映されている。
「基本的に一度つくったCMは1年間放映され続けるため、1年間繰り返し見られる、見てもいいと思えるような耐久性があるCMにすることを意識しています。家族をテーマに、その時々の世の中の気分を織り交ぜて、普遍的な内容をと考えていますね」(澤本さん)。
毎年放映を続けると、徐々にCMを見て東京ガスに興味を持ったという学生も増え、就職人気にも貢献したという。テレビCMがブランディングに寄与していることがわかり、毎年続けられるようになった。
「2008年前後から、SNSのユーザーが拡大していったことも大きな要因だと思います。テレビCMが放送時以外のタイミングでも皆さんの目に留まる機会を創出できるようになり、年々多くの視聴者に届き広がっていることが可視化されてきました」。
……続く内容は、「なぜ『家族』というテーマ、『料理』という切り口でCMを続けてきたのか」「2022年からコピーをアップデート」などです。
続きはぜひ誌面でご覧ください(ご予約・ご購入はこちら)。デジタル版の記事も、ご購読で続きがお読みいただけます。
月刊『ブレーン』2024年5月号
【特集】「長く愛される 企業になる 広告・デザイン」
詳細・ご予約は《こちら》※Amazonページに移行します。
▼特集のトピックス
- 「個人的な言葉」も
- 共感が集まれば「普遍」になる
- ルミネ
- 「家族の真ん中には何がある?」
- 東京ガスが家族を描いてきた理由
- 東京ガス
- 変わる時代の変わらない
- “パルコらしさ”とは
- パルコ
- 「ペコちゃん」が
- ロゴマークに変わったわけ
- 不二家/不二家洋菓子店
- 「時代と握手をし続ける」
- ために必要な“普通”の感覚
- リクルート『ゼクシィ』
- しっかり届けて
- 成果を出すBtoB広告
- 並走の仕方
- クボタ
- 「愛されるには
- 他とは違う“個”として
- 認識されること」
- SNS時代の企業広告の考え方
- IHI