2023年度TCC賞の受賞作品や審査通過作品を収録した『コピー年鑑2023』。今回の特長のひとつは、読み応えのある審査選評です。一般部門の「TCCグランプリ」「TCC賞」の計15作には、3人の審査委員がそれぞれ800~900字の選評を寄せています。その一部をアドタイで紹介します。
今回は、TCC賞を受賞した大塚製薬「カロリーメイト」(受賞者/福部明浩)への、佐々木宏さんの選評です。
イヤー、とにかく、もう、ゼッタイ、コレが(佐々木宏)
グランプリだと思ったのです。「進もう、すべてを栄養にして。」は、2 年目のコピー。福部くんに聞いたところ、商品のポジショニング的に、栄養、という言葉をどうしても使いたかったそうです。コロナだ、戦争だ、ま、いろいろあるが、なんでも栄養にしてしまえ。という野太い声は、どーんと根を張りそうな、コピーかもなと思った。
「そうだ 京都、行こう。」は、実は、スタート時、TCCは、意外に冷たく、発案者の天才プランナー安西俊夫は、よく、「あー、一回でいいから、コピーライターに感動させられてみたい」と憎まれ口をたたいていました。コピーなんて、「あ、そうだ、京都へ行こう!」とかでいいんだよと、それが、30 年続いた。
「進もう、すべて、栄養に」も、「行こう、そうだ、京都へ」みたいな平易さですが。でも。そのコピーが、スマホから、TikTok的なタテ型画面にスッとタテに現れたとき、思っちゃいました。こ、これは、艱難汝を玉にす、を超えたなと。わかりづらいか。
ミスグリの『僕のこと』は、中高生ならコレ、歌詞がドンピシャ!とか言って、銀髪AD榎本卓朗クンが投げ込んだみたい。“狭くて広い世界”は、この歌の歌詞ですが、スマホと、受験の2 大テーマを、両方言い得ている。鋭い選択眼。センスと運。この二人。ジョンとポールか。スマホの受験アプリで、勉強を続け、LINEで弱音を吐ける相手と常時接続。つい、ゲームをやってしまう。なかやまきんに君のスタンプに励まされたり、バスケ中の自分のゲキ動画が自分に飛んできたり、公私混同、ONOFF往来、国際情勢からプライベートのその奥まで。
「彼のスマホが、彼を一番見ていた。」がリアル。今回は、学校や、家庭のドラマ臭ささを、極力消し去り、スマホと受験生。受験アプリと受験仲間だけにしていて潔い。田中嗣久監督も、しばし、スマホの住人だったはず。いままでのCM手法が全部古臭く見えるほど、新しかった。
スマホで、ネットで、繋がろう大集合!ものは辟易だが、コレは違った。今どきの受験生のリアルを見つけ、そこに寄り添う栄養メイトと、命より大事なスマホの眼で描ききった新しくて、気持ちのいい120 秒。
合格発表もいまはスマホなんだなあ。ラスト泣ける、見事。スタッフ皆スペシャル。福部、相変わらず、その取材力、洞察力、考えている熱量が図抜けている。都知事にしたい。
コピー年鑑2023
2023年度のTCCグランプリ、TCC賞、TCC新人賞をはじめ、5000点超の応募作品の中から90人のコピーライターが選んだ広告645点を掲載。受賞作品とファイナリスト作品には、審査委員の眼力と筆力の集積ともいえる充実の審査選評を収録しました。今年の広告は、世の中に何を問いかけたのか。「言葉を読む、コピーを読み込むための年鑑」から、コピーライターたちの熱いエネルギーを体感してください。
編集/東京コピーライターズクラブ 審査委員長/太田恵美 編集委員長/麻生哲朗 アートディレクター/関戸貴美子 発行/宣伝会議 定価:22,000円(税込)
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