この本が存在しなかったら今の日本はもっとつまらない国になっていたんじゃないか、とすら思う。
『広告コピーってこう書くんだ!読本』が出た2007年、僕はコピーライターを目指す大学生だった。それから17年。この本を読んだ多くの若者がコピーライターになり、今、中堅と呼ばれる世代として日本中で広告をつくっている。大変な時代だったりするけれど、それでもなんとかがんばっている。コピーライターの眼というのはどういうものなのか。自分が書くコピーをどういう眼で見ればいいのか。もしもこの本がなかったら、広告コピーの基準は今よりさらに低いものになってしまっていたと思う。それほど多くのコピーライターに影響を与えたこの本が、増補新版として帰ってきた。
著者である谷山さんが教える宣伝会議コピーライター養成講座のクラスを二度見せてもらったことがある。一度目はまだ開講したばかりの頃で、その熱く鋭いフィードバックにおどろいた。二度目は最終プレゼンの審査で、生徒たちの書くコピーの変化におどろいた。格段の成長。プレゼンを聞きながら、かつて谷山さんが自分はコピーを書くことよりも教えることの方に自信があると言っていたことを思い出した。その時は信じられなかったけれど(だってコピーを書くことがあんなに上手いのだから)、最終プレゼンに立ち会って、谷山さんの教育力に感服した。
野球には「名選手名監督にあらず」という言葉がある。どの世界も、プレイヤーであることと指導者であることは別物の技術が必要になる。しかし、コピーライターの世界では、プレイヤーとしての技術と指導者としての技術が一致することを谷山さんは示してくれる。
『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』
4月11日発売/谷山雅計著/定価2,200円(税込)
興味を惹くことと記憶に残ること。コピーライターが言葉に込める二つの技術を、コピーライティングの教育に発揮したらこうなる、ということを谷山さんはやっているように思う。
そう考えるとおもしろそう、というキャッチーさ。一過性ではなく定着するための覚えやすさ。コピーライティングについてのコピーがこの本には散りばめられている。
大事なのは方法ではなく体質だと、谷山さんは説く。方法は忘れてしまうけれど、体質は維持できる。そして体質は改善できる。この本は特効薬というよりは、漢方に近いのかもしれない。長い時間をかけ研ぎ澄まされた知恵の結晶としての薬だから、長く効く。
人生の折々で繰り返し読まれるためにこの本はある。熱い気持ちで読むのもいいけれど、熱が冷めてきた時に読むのもいい。熱は高いところから低いところに移動する。この本はいつも熱いままだから、読む人を温めることもできるし、沸騰させることもできる。
『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』。明快であり深遠。始点であり到達点。入門書でありバイブル。
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三島邦彦(みしま・くにひこ)
電通/コピーライター
主な仕事にNetflix「人間まるだし。」「上を見ろ、星がある。 下を見ろ、俺がいる。」、本田技研工業「Hondaハート」「きょう、だれかを、うれしくできた?」「難問を愛そう。」、Honda F1ラストラン「じゃ、最後、行ってきます。」、三井住友カード・Vポイント「上手な生き方、とかじゃなく、みんなが幸せになれるといいのに。」など。著書に『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』(宣伝会議)。
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コピーライティングのベストセラー教本、待望の増補新版
『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』
谷山雅計著/定価2,200円(税込)
2007年に発売された広告コピーのロングセラー書籍『広告コピーってこう書くんだ!読本』が、増補新版になって新登場。デジタルやSNS時代のコピーのあり方についても言及した、約2万5000字の新テキストを収録しました。「人に伝わる」「伝える」広告コピーを書くためのプロのエッセンスを学べる一冊。
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