天才と言われる人は、その道において生まれつき突出しているわけではないことが多い。その道において「努力できる力」が突出している場合が多いのだ。努力を厭わない、何の苦もなく没頭しつづけられる人のことだ。その没頭の結果、常人との圧倒的な差が生まれる。
ぼくはまったく天才ではないが、部分的に同様のことをやったといえる。
迂闊に大ボラを吹いて、作り切らざるをえない状況に自分を置いてしまったこと。
また、周囲の配慮のおかげで、〆切やプログラミング物量において努力することを許してもらった結果、通常のレギュレーションでは作れないゲーム型広告ができたことが、差別化のカギだ。
映像作家/クリエイティブディレクターの藤井亮さんは、「TAROMAN」「石田三成」「金太の大冒険」等で独特の世界観でヒットを飛ばし続けているが、実写だけでなくアニメーション作品も多い。
以前お会いしたときに、
「どうやって、あの独特の雰囲気を作れるようにアニメーションチームをディレクションしているのですか」
と聞いたところ、
「ディレクションできないんで、全部自分で描いてます」
と答えていた。
キリン淡麗グリーンラベルの「GREEN NAME」というキャンペーンがある。あらゆる名前の漢字から、自然に関係した文字や部首を、グリーン・ネイチャーに関連するビジュアルに変換してくれるというヒット作だ。メインエンジンを作った中村大祐に、
「部首までグリーン化するとなると、どういう仕組みでデータセットを作ったの?自然に関係する言葉を抽出するための、うまいルーチンがあるのかな?」
と聞いたところ、
「JIS第一水準の漢字は3,000文字くらいなんで、人力でやりました」
と答えた。
「細部に魂は宿る」という言葉があるが、ただ、やたらに努力せよ、という根性論ではない。
一見「ちょっと無理そう」なところの向こうに、見たことのない表現が埋まっている。あなたであれば活かせる努力によって差別化要素を見つけた時、そこに宝が埋まっていることが多い。
ともあれ、このバナーの仕事がレギュラーになったおかげで、半年で契約期間が終わるはずだった週3のバイトが、週5の業務委託になった。
迂闊鬼十則の39
人より努力できそうなポイントを見つけると、
差別化のカギになる