プロ野球はファンが最優先―経営企画視点のライオンズ流「シン・広報戦略」

業務改善ののち、マーケティング広報を本格化

余力ができたところで、マーケティング広報(営業広報)です。経済ジャーナリストが「ファンと長くコミュニケーションを構築する必要がある」と話していましたが、顕在化しているファンの方には1年かけて、どういったニーズを欲しているのかを理解したうえでアプローチすべきだと考えました。

よって2023シーズンは広報部が持つ経営資源を投下せず、今いない潜在ファンに対してアプローチするため、ライオンズの強みを多様な媒体で取り上げてもらいました。これについては次回お話しします。

次はコミュニケーション機能の統合化です。今後は若いファンを増やすため、SNSも戦略性をもって取り組んでいかなければなりません。これまで、SNSチームは別部署に属していましたが、コミュニケーション機能を統合化し最適化することが適切だと経営陣に説明し、今年4月からSNSチームを広報部に移管してもらいました。

広報部各種ツールとSNS連携により、エンゲージメントが飛躍的に向上。隅田知一郎選手の結婚発表にまつわる投稿の例。

このような機構改革は、組織を司る経営企画のようなセクションの経験があれば、アレンジしていくことは可能です。広報部にあるリソースだけで考えると限界があります。

会社のため、そしてファンに有益な企画を実行するためには、周りの人たちを巻き込み、協力してもらい、みんなで組織を変える。「マーケティング思考」と「イノベーション思考」は、事業マネジメントを進めていくためにとても大事だと思っています。

実は、部員には最初からすべてを説明していません。「面白い仕事をするために余力を作ろう、そして憧れの媒体に取り上げてもらおう」だけでした。

また業務や戦略が変わったと一目で感じてもらうため、かつ面白そうと思ってもらえるように「シン・広報戦略」と名付け説明しました。その後は前回話した意識改革へとつながります。

筆者が作成した「シン・広報戦略」の資料から。提供:西武ライオンズ

そして着任から1年後、近隣のグループ施設で、1日かけてのオフサイトミーティングを行い、前述のビジネスモデル、ビジネスフレームワーク、経営課題などを話し種明かしをしました(笑)。ミーティング前にアイスブレイクとしてキャッチボールをしたり、多摩湖畔を散策したり、夜は社長や担当役員にも参加いただき車座で懇親も深めました。

次回は、今いない属性にライオンズの情報を届けるために行った「美肌の選手を美容雑誌に…西武ライオンズで実践してみた『戦略PR』の話」についてお話します。

 

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赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)
赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)

2000年コクド入社、2004年広報室へ配属、以降は西武グループ各社で広報と企画を相互に歩む。2006年プリンスホテル事業企画部広報担当、2009年に同部ゴルフ・スキー担当も兼務。2011年西武ホールディングス広報部、2018年に経営企画本部 経営戦略部。2019年に同本部 西武ラボ(新規事業創造)課長となり、2023年から西武ライオンズ 広報部長。

赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)

2000年コクド入社、2004年広報室へ配属、以降は西武グループ各社で広報と企画を相互に歩む。2006年プリンスホテル事業企画部広報担当、2009年に同部ゴルフ・スキー担当も兼務。2011年西武ホールディングス広報部、2018年に経営企画本部 経営戦略部。2019年に同本部 西武ラボ(新規事業創造)課長となり、2023年から西武ライオンズ 広報部長。

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