5つのスキルマトリクスの構成要件
機密保持の関係もあり、全文をつまびらかに公開することは控えさせていただきますが、メルカリPRチームより許可を得たうえで、一部抜粋してご紹介したいと思います。
基本思想としては、会社全体のグレード定義をベースに、PR業務に固有/共通のスキル要件・資質として以下の要件を定義しました。
- 1) 見立て力(ポジ発信)
→社内外の動向や世論の動き・トレンド、本質的な事業課題/経営課題を踏まえた適切な見立てを通じ、事業/経営に貢献する成果を創出するプランニング能力 - 2)リスク対応力(ネガ抑止)
→顕在化の有無を問わず、社内のリスク・イシュー事案に対して適切なリスク判断/評価のもと、関係部門と連携/調整して適切に対応を行うことができる能力 - 3)プロジェクトマネジメント力(上位グレードはマネジメント力に互換)
→自身の専門性をもとに、チームメンバーや他部門を巻き込みながら、適切なプロジェクトマネジメントを通じ、課題解決を行い、成果を創出する能力(スペシャリスト)
→上位戦略に基づいた適切なチームマネジメントを通じ、チームとして成果を創出する能力(マネジメント) - 4)関係構築力(社内・社外)
→社内外のステークホルダーと適切な信頼関係を構築できる能力。社内においては経営陣や事業部、マーケティング部門等との信頼関係構築、社外においては主にメディアとの関係構築 - 5)基礎スキル
→PRスキルのみならず、事業グロースや経営視点でコミュニケーションの設計をするための付随知識を有している(ロジカルシンキングやファイナンス、マーケティングに関する基本的な知識・理解)
もしかしたら、一見して「なんだ、こんなものか」と思われた方もいるかもしれません。
ポイントとしては、これらのスキル要件のどれかひとつ満たしていればOKということではなく、大きな成果達成に向けては複合的な要件が必要になる、ということです。
そもそもPRという仕事は広報チーム単体で成立するものではありません。いかにプランニング能力(見立て力)が高くても、経営陣や他部署との信頼関係が構築できていなければ彼らの協力を得ることは難しいでしょうし(関係構築力)、適切にプロジェクトマネジメントできなければ旬のタイミングを逸してしまう可能性があります(プロジェクトマネジメント力)。
社外の視点で言えば、いかに良いPRストーリーが描けたとしても、それを届けるべき記者を特定し、良好な関係性が築けていなければ、アウトプットも中途半端なものになってしまいます(関係構築力)。
また、事業が拡大していく過程においては、メルカリの現金出品問題やコロナ禍のマスク転売問題に見られるように、意図せぬ不適切利用や社会からの軋轢に直面することもあるなかで、潜在的なリスク・イシューの端緒を掴み、適切に対応できなければ、これまで築き上げた信頼を一瞬で失うことにもなりかねません(リスク対応力)。
加えて大前提として、広報のスキルだけでなく、ロジカルシンキングやファイナンス、マーケティングなど、ビジネスパーソンとして当たり前の知識を有していなければ、経営陣や記者と対等に対話できるようになるには望むべくもありません(基礎スキル)。