セガ
広報部 副部長
山田 愛 氏
X(Twitter)をはじめとするSNSセガ公式アカウントを2012年より10年超にわたり担当する「中の人」。X(Twitter)フォロワー数は約55万フォロワー。企業広報に従事する傍ら、SNSを活用したレピュテーションの向上や顧客との関係強化、採用広報に携わり、硬軟織り交ぜた情報発信を積極的に展開中。書籍・マンガほかメディア露出多数。その他セガが運営する公式アカウントのアドバイザーも務める。
Q1:現在の仕事の内容とは?
X(旧Twitter)をはじめとするSNSセガ公式アカウントを2012年より12年にわたり担当しています。その他企業広報や社内用の動画制作などインターナルコミュニケーションに従事する傍ら、SNSを活用した企業レピュテーションの向上や顧客との関係強化に携わっています。
SNSで企業として広報発信する強みは、硬軟織り交ぜた内容を発信し、双方向のコミュニケーションを長期的に行うことで、会社を広く知ってもらえることができる点です。例えば、卒業を祝う黒板アートを制作するなど季節イベントに沿って自社製品・サービスの紹介をしたり、セガアイコンを365種作って無償配布したりするなどです。ファンに喜んでもらえる企画を時には一緒に考え実施して、親近感や信頼感を醸成し、セガを好きになってもらうことを目標にしています。現在ではSNSを活用した採用広報にも力を入れており、学生さん向けに商品が世に出るまでのプロセスやリアルな従業員・社内の様子も伝えています。
Q2:これまでの職歴は?
新卒でセガに入社し、2年目で代表取締役COO秘書になりました。スピード感が求められるトップマネジメントの経営判断やリスク管理などを、傍らで見ながらサポートする中で、単に期待通りの仕事をするのではなく、広い視野をもって、黒子に徹し、手間を惜しまず期待を超える仕事をすることを心がけるようになりました。
その後、採用人事を担当したのち、アーケードゲーム機の製品プロモーション部署へ。ポスター制作などでコピーライティングを学んでいる際に、「山田さんのFacebookの投稿がおもしろいから」という理由で企業公式SNSの立ち上げを担当することに。いわゆる企業アカウント黎明期に「中の人」になり、手探りで運営を続けてきて早12年目、フォロワーも3,000人から55万人と180倍になりました。現在では、トップマネジメントが社内のキーパーソンと対談する動画制作にも携わっており、SNSで培った知見を従業員のモチベーションの刺激につなげられないかと奮闘しています。
Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
秘書・人事・広報と、人と人をつなぐさまざまな職種を経験する中で、ただ伝えるだけでなく「伝わっているか」は強く意識してきました。
広報担当というと、卓越したコミュニケーション能力が要求されるイメージですが、もともと私は子供のころから、みながドッヂボールをやっている校庭の片隅で、独り本を読んでは空想をしているタイプ。対人コミュニケーションには苦手意識がありましたが、人と人をつなぐ仕事を続けてきて、こちらは何を伝えたいか、あちらは何を知りたいか、その間をつなぐ私自身はどう表現したらいいか、そのギャップをどう効果的に埋めたらいいか?ということを考えるようになりました。つまり、常に俯瞰で見ながら、企業にとって、お客様にとって、そして社会にとって、ベストでユニークな表現はなにかを考えるということです。
特に企業におけるSNS発信においては、美辞麗句で飾らずに個性を等身大で表現することが受け入れられやすいということに気づいてからは、前例や型にはまらず、たとえ完璧でなくてもプロダクトやサービスが生まれるプロセスや真摯な姿勢をリアルに伝えるようにしました。具体的には、セガ公式アカウントオフ会を企画し準備の様子から投稿したり、高知県産の文旦の皮でセガのキャラクターをつくる文旦アートにチャレンジしたり、鳥取県産のとうふちくわでちくわ笛をつくり「セーガー♬」と吹いてみたり、“セガ社員による社員のための社員食堂ディナーショー”の様子を中継したり…。フォロワーからは「さすがセガ!」の声をいただくこともあれば、「ドンマイ!」と励ましの声をいただくこともあります。中庸な発信は埋もれてしまいがちなため、どこか尖った工夫をすると同時に、細部に気を配る、繊細かつ大胆な仕事をするよう心掛けています。ひとつひとつの仕事の積み重ねで長期的に社内外からの信頼を得られ、次の仕事につながっていくと考えています。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?
グローバル広報の知見や経験を得ることです。実をいうと5年ほど前まではSNSにおける日本語投稿が海外で炎上することは少なかったのですが、いまはデジタルで世界がつながり、翻訳ツールが普及し、日本のゲームやアニメ文化も広く世界に受け入れられたことで、企業リリースからSNS投稿に至るまでの注目度も飛躍的に高まりました。海外からの反応や評判が非常に重要な意味を持つようになり、時代の変化を認識し、グローバル広報の重要性に対応していく必要があると感じています。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
ソーシャルメディアを軸に、オウンドメディア・アーンドメディア・ペイドメディアのトリプルメディア連携を強化しつつ、当社のサポーターを増やしていきたいです。長期的にはブランド価値の向上につながると考えています。またSNSを使用しているファンはもちろん、従業員も多いことから、副次的に社内広報としても機能しており、社内の取り組みや従業員の活躍、メディアへの露出情報などがリアルタイムで共有され、従業員のモチベーションの刺激にもつながるのではないかと考えています。
【次回のコラムの担当は?】
薬剤師 兼 広報課長という浅田飴の小杉寛之さんにバトンをお渡しします。
病院勤務等を経て浅田飴に入社され、入社時より商品開発を担当し、2015年から広報課を兼務されています。スポーツファーマシストの資格をお持ちで、ドロップ剤を中心とした医薬品やのど飴、甘味料等の商品開発、製剤開発、薬事、お客様相談室で構成される商品開発部のマネジメントをされているほか、広報課を兼務する形でプレスリリースやwebサイト制作、SNS運用、ビジュアルの制作、キャンペーンやイベントの企画運営なども担当されています。アニメやゲームとのコラボレーションやスポーツ協賛事業など、話題の広報施策の裏側をぜひ。