死相が出るほどの過酷な撮影だった
権八:天音さんは、ご本人ともお会いしてるからアレかもしれないけど、主人公のツチヤタカユキに共感しますか。
岡山:僕も、まあ少なからずみんなそうだと思うんですけど、他者と繋がったり、自分の外側の社会と上手いこと折り合ったりすることができないっていう葛藤や難しさは、先天的に持っていて、子どもの頃からわりと苦しんできたので、そこに対してはすごくシンパシーを感じました。ツチヤに関して言うと、自分と同じだとまではいかないですけど、理解できない部分はあんまりなかったです。最初から「わかるな」って感じで。
中村:ツチヤタカユキってクリエイターとしてある意味純粋なわけじゃないですか。自分が面白いネタを書き続けるっていうことに対して純粋で、あまり社会に迎合しない面もあるので、一瞬憧れてしまう気持ちもあると思うんですけど、そういうのって天音さんは感じますか。
岡山:僕は唯一ツチヤタカユキ役を演じた人類なので、うらやましいっていうのはあんまり……。やっぱり苦しいです本当に。彼の視点から見た世界は大変でしたね。ピュアがゆえに、感情の起伏もものすごく激しかったですし。でもその分、お芝居の醍醐味はふんだんにある現場ではあったんですけどね。
権八:映画を見進めるうちにどんどん体調が悪くなってきちゃったり。
全員:あははは。
中村:そうそうそう、苦しそう。
権八:ね、演技だろうけど苦しそうで。
岡山:ツチヤさんも1回現場見学に来てくださって、でもあんまりそのときお話してなくて、終わってからいろいろお話する機会をいただいたんですが、「もう死んじゃうんじゃないかと思った」って言ってましたね。大変そうすぎて、僕の顔に死相が出てたって。
権八:本当にすごい迫真の、それも含めて迫真でした。
中村:いや本当に。
権八:すごかったな。実際ツチヤさんご本人も体壊されてるんですよね。
岡山:そうですね。
権八:腸が3ヶ所破けてたとかって。
中村:え、本当!?
権八:入院してるときの写真とか映像がネットに出てたけど、だから要するにストイックにネタ作りとかに没頭しすぎて、飯もまともに食ってない感じでしたね。
岡山:食べるシーンが映画でもちょこちょこ出てくるんですけど、基本あんまりおいしそうな食事シーンがないっていうか。生き延びるために腹に入れてるみたいな。だから取材でも、「あのシーンで食べたあれって何なんですか」って聞かれることもあって。美しくおいしそうに描写するのではない、そういう食事の表現も面白いなと思いますけどね。ツチヤならではというか、『笑いのカイブツ』ならではというか。
中村:この役は正直難しいんじゃないかと思って。ずっと苦しい顔してるし。しかもツチヤタカユキって無口じゃないですか。あ、あと関西弁は元々?
岡山:いえ、方言指導で。データで音をいただいて聴きまくりました。
権八:じゃあめちゃくちゃ難しかったんじゃない?
岡山:そうですね。でもあんまり喋らないので助かりました。
中村:逆にそうなんですか。
岡山:大阪弁はやっぱり難しくて、めっちゃ格闘しましたね。「今のだとちょっと違う」とか言われて、「今天音くんは〇〇なんやって言ってるけど、正解は〇〇なんや」って教えてくれるけど、その違いがわからない。
全員:あはは!
岡山:モスキート音みたいに僕の耳だと「キャッチできないですその違いが」ってなってしまって。でもそのぐらい、方言指導は古賀(勇希)さんという若手芸人の役で出演もしてる俳優の方なんですけど、つきっきりで指導していただきました。熱血で。
中村:じゃあもうだいぶ会得しました?
岡山:いやあ……?
全員:あははは。
岡山:方程式みたいなものを掴んでるわけではないので、丸暗記というか耳コピみたいな状態ですよね。ひたすら聞いて覚えて。だからツチヤのセリフだったら、今でも言えるかもしれないですけど、応用はできないです。