「見る前に跳べ」という言葉がある。
元東芝・元東大教授の竹内健さんの『世界で勝負する仕事術』にはこうある。
もう少し考えてから、様子を見てからなどと言っていたらチャンスはどんどん逃げていきます。跳ぶことが怖くなってきます。だから、見る前に跳ぶのです。もちろん、見る前に跳んだら、落ちてケガすることもあるでしょう。(中略)しかし、跳ばないで待っているより、跳んで失敗した方が断然学ぶものが多いのです。最後に勝ち残るのは、リスクを怖がらずに跳んで、たくさん失敗した人です。
今回の連載でいちばん伝えたいことの本筋でもある。
一方、ちょっと暴論かなとも思われるのではないか?
現代は、全員が炎上リスクやハラスメントリスクに囲まれている。ドラマ『不適切にもほどがある!』にもあるように、ふとした社内やSNSでの発言でいとも簡単に会社人生が終わったりする。
リスクを避けて動きたい。タイパよく動きたい。ムダなことはしたくない。
そういう考え方の人には
「おいそれとリスクを取る発言や行動はできないっす」
と響かないメッセージなのではないか。
「やらない理由」はいくらでも作れる環境にある。新規事業、転職、新しいプロジェクトへの参画、留学、リスキリング——。やらない理由の一番はやらなくても、別に死なないからだ。
この国でどんなに仕事をしなくても、なかなか飢えることはない。しかし、サラリーマンは稼ぐ力という牙を静かに抜かれている。会社を離れたら個人で売上を立てられるのか?そして、自分がなぜ結果を出せないかわからないまま、井の中の蛙で一生を終わる。
学校や親は「いろいろ首を突っ込んで、自分から失敗しに行きましょう!」などとは絶対に教えない。むしろ、中学受験、大学受験、就職活動においては「後々失敗する回数を減らすために、いま頑張っておきましょうね」とインプットされているのではないだろうか。
しかし、彼らに備わらないのが、迂闊力、「見る前に跳ぶ」力だ。