たとえば、ほとんどの場合、人からものを頼まれたら、まずは成功や失敗を打算しすぎず、二つ返事で「やります」と言ったほうがトクをする。やらない理由を探す人は損をする。
なにか依頼をされているということは、あなたご指名で何かの期待をされているという、非常に稀有な状況だととらえよう。相手も、あなたに話しかけるために、それなりの覚悟やカロリーを使っているのだ。それに敬意を表し、まずは、とにかくポジティブに依頼を聞くべきだ。絶対にゼロ回答はするな。
で、その後「あ、でも、基本やるのですが、その上でいくつか問題があるかもしれないので確認しますね。もしダメだったらごめんなさい」と言えば、あくまで自分は前向きなんです、そのあと断らなければならなくなったら、自分の意図とは違うんですということが明確になる。
2003年ごろだったか、当時一度も会ったことのない、一度も面識のない方から社内メールで
「はじめまして。突然ですがインターンシップがあるのでブログを作ってくれませんか」
と頼まれた。おそらく、当時の電通で、社員むけにCMSを無料で立ち上げてくれる人なんていなかったから、人づてにぼくの名前を聞いたのではないか。
ぶっきらぼうな方だなとは思いながら、ぼくのスキルがお役に立てることが嬉しかったので、「こんなことは自分の仕事ではない」などという気持ちを抑え、すぐに自費でレンタルサーバーを借りて、WordPressをインストールして(月額500円程度だった)、新規ブログを立ち上げた。
どうせなら、サプライズ感があったほうがいい。
まさか、相手も、いきなり細かい相談もなく立ち上げてくれるとは思うまい。
ドメインも仮で取ってしまおう。
メールには、こう返事した。
「はじめまして! 中村と申します。ご連絡ありがとうございます。
さっそくつくってみました! こちらです。
https://xxxxxxblog.com
何かご要望があれば、なんでもどうぞ」
この「ブログを作りたい」とメールした人が、ソフトバンク家族割「犬のお父さん編」でおなじみの澤本嘉光さんである。当時から飛ぶ鳥を落とす勢いだった澤本さんのことを知らなかったのも不謹慎きわまりないが、これがきっかけで、その後何度もプロジェクトにも声をかけていただき、果てはTOKYO FMのラジオパーソナリティに「毎週ゲスト」という口実で誘ってくださった。番組はもう10年も続いている。
ADHDは、リスクへの警戒心が低い。リスクをリスクと思わない。その分いろいろな失敗を繰り返す。いくつかの大きな成功と多数の失敗。こと人生の前半、特に30代までにおいては、新しいチャレンジに本当のリスクなんてほとんどないということだ。
人は「得られることより失うことのほうがずっと嫌い」と感じる傾向があるという。
行動経済学では「損失回避バイアス」と呼ばれる。
こんな実験がある。