I-neの「らしさ」を生み出している源泉とは
—— 井上さんは昨年I-neに転職されたと伺いました。マーケターとして、どんなキャリアを歩んできたのですか?
井上:僕は、元々音楽活動をしていて、高校を出てからずっとミュージシャンを目指していたんです。27歳ぐらいでそれはあきらめて、デザインに興味があったので、DTPデザイナーを目指しました。未経験だったので知り合いのツテをたどって「無給でいいから」と小さなデザイン工場みたいな場所にもぐり込んだんですよ。
そこから家具販売の会社のECプロモーション担当を経て、前職のオイシックス・ラ・大地(以下オイシックス)に入社。主にマーケティング担当として8年間過ごしました。そして、昨年6月にI-neに転職しました。
北村:なぜ、I-neに移られたんですか?
井上:オイシックスでは徹底したロジカルシンキングを学びました。山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』という本の中に、ビジネスは「アート」「サイエンス」「クラフト」の3つが重要だという話が出てきます(編集部注:「アート」は直感・感性、「サイエンス」は論理・理性、「クラフト」は経験・知識を指す)。それでいうとオイシックスは「サイエンス」の会社。だから、次は「アート」で成長している会社で働いてみたかった。そこで出会ったのがI-neだったんです。社内メンバーが音楽に精通していることを知って、そんな話にも共感して。
I-neでは、「BOTANIST(ボタニスト)」「YOLU(ヨル)」などをはじめとした、ヘアケアやスキンケアを扱う「ビューティケア事業本部」でブランドコミュニケーションを担当しています。
北村:ビューティーケア商品といえば、大量にテレビCMを打ってプロモーションすることが多かったカテゴリーだと思います。I-neではそこと一線を画すことをポリシーにされているんですか?
井上: 主力商品の「BOTANIST」の発売は9年前で、当時は、大手企業のようにマス広告を行う予算がなく、デジタルやソーシャルを駆使するしかありませんでした。社内で話を聞いたら、その頃に海外のミュージシャンたちがインスタグラムを使って集客していたことにヒントを得て、それが自分たちの商材にも合いそうだと始めたそうです。I-neではそういう会社のカルチャーや人の感性をマーケティングに紐づけていくので、「らしさ」が出るのだと思います。
ただ、今は大手も当然デジタルやソーシャルに取り組んでいるので、状況はだいぶ変わっています。
北村:逆に、大手が「BOTANIST」のようなやり方を取り入れるようになった、とも言えますね。
井上:それこそSNSを使ったマーケティングの教科書もいっぱいありますし、代理店さんやパートナー企業からの提案にもそういうメニューが増えていますよね。ただ、会社としての考え方やカルチャーの土台がちゃんとしていれば、自然と差別化はできると考えています。
社内にはP&Gの出身者だったり、社外取締役には足立光さんもいらっしゃいます。自分たちのノウハウだけでやるのには限界もあるので、世の中をリードする企業に学びながらやっています。その際に、大手のやり方をそのまま真似るのではなく、うまくエッセンスを抽出しつつ、自分たちの強みと組み合わせて社内にノウハウを貯めていく、ということを意識しています。