マーケティングの教科書が教えてくれない「使い分け」「引き算」の技術(北村陽一郎×井上政人)

「過剰設計の罠」に陥らないために

井上:この本の表紙には「過剰な一般化」「過剰な設計」「過剰なデータ重視」がNGと書かれていますが、中をよく読むと「時と場合によるよね」と書いてあるんですよね。時と場合によっては、教科書通りでもいいし、データ重視でもいい、お客様の声を重要視してもいい。でも、そうじゃない場合もあるよね、という部分にすごく共感しました。自分が社内でチームマネジメントをしたり、教えていく上でも、この「時と場合による」をいかに伝えて実践していくかが大事だな、と感じています。

北村:「過剰な設計」に陥りやすい理由の多くは、上からの承認を得やすくするためですよね。実際、現場ではそれがすごく求められます。特に「サイエンス」寄りの企業に多い傾向だと思います。最初の設計部分は上の人間も含めてみんなが見るので、そこにめちゃくちゃ力を入れる。「穴は許しません」「予算も全部はめてください」ということになるんだけど、それはちょっと設計し過ぎだよね、ということです。

人に教えるという話も同じで、「やってみたらこうなった」という体験は教育や育成においても大事です。事前にアカウンタビリティがないと判が押せない体制では、いろいろな可能性を狭めてしまう。まずはスタートしてみて、想定外の事態が起きたことでやっと理解が深まる。最初に設計を固めすぎてしまうと、修正をしながら上手くいくようになる道を手前で止めてしまうことになると思うんです。

井上:「PDCA」が大事だと言われながら結局「PD」ばかりの会社が多いのも、設計に偏り過ぎているのだと思います。前職のオイシックスでは「空雨傘」という考え方が根付いていました。ファクトを見て(ex.空が曇っている)、その意味を考えて(ex.雨が降りそう)、仮説と行動を考える(ex.傘を持っていった方がいい)。そんな風にPDCAを積み上げていくと次へのヒントが生まれるんじゃないかと。そう考えると、プランの段階で足踏みするのは意味がないんですよね。

写真 人物 複数スナップ 井上政人 北村陽一郎


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