マーケターは「自分とは違う意見」を求める姿勢を持つべし
——最後に、マーケターの成長や育成には何が必要だと考えますか。
井上:「北村塾」のお話にもつながると思いますが、やはり自分が身につけるためにはインプットとアウトプットを繰り返すことが大事だと感じます。僕は書籍を読むことが多いのですが、ただインプットしているだけだと「わかった風」になってしまう。だからこそ、アウトプットをしながら周りの意見も取り入れていくことが大事だと思います。
北村:本当におっしゃるとおりで、「北村塾」でも、自分で話しながら「あれ、ここは矛盾しているな」と思うことはよくあるんですよ(笑)。本を読んでいる時はふむふむと納得するのに、いざ話し始めると脳の違う部分が動いているような気がする。アウトプットする時に初めて使う脳の部位があるのかもしれませんね。
あとは、なるべく自分の年齢や経歴とは異なるタイプの方と会話をすることだと思います。この前、『ソーシャル物理学「良いアイデアはいかに広がるのか」の新しい科学』(アレックス・ペントランド著)という本を読んだのですが、優れた意見を求めに行かずに「自分とは違う意見」を求めに行った人が成果を出す、ということが書かれていました。ですから、私は常に自分とはなるべく遠い人を見つけてアイデアや情報交換をするよう意識しています。
「北村塾」を少人数制にしているのも、同じ理由です。私はいま50歳です。「認知が重要」「認知にはテレビだ」みたいな考えに、脱しようとしていてもどこか引っ張られているはずなんです。だから、参加者にはそれぞれ自分の目で現状を見て状況判断してもらい、ディスカッションをすることを大事にしています。私は先生ではなくて、1年目のプランナーも、経験を積んだ人も、対等に学び合う。違う人たちが組み合わさらないと考えが伸びていかないからです。
井上:面白いですね。今日は社内のマーケター育成を考えていく上でもいいヒントをもらいました。ありがとうとございました。
北村:こちらこそ、ありがとうございました。
井上政人(いのうえ・まさと)
I-ne ビューティケア事業本部ブランドコミュニケーション部 部長
大阪府出身。高校卒業後、音楽活動と並行して植木職人、木こり、デザイナー、Eコマースディレクターとして活躍。2015年Oisix(現オイシックス・ラ・大地株式会社)に入社。OisixではEC事業本部PR室、統合マーケティング部ソーシャルマーケティング室長、統合マーケティング本部長などを経験、2023年I-neに入社し現職に。
北村陽一郎(きたむら・よういちろう)
電通 統合プランニング・ディレクター
1973年生まれ。東京大学教育学部卒、1996年電通入社。テレビ広告・スポーツ放送権業務などを経て、2012年より広告プランナー。自動車・食品・精密機器・金融・アプリなど幅広い広告主のプランニングに従事するかたわら、社内向けの少人数制プランニング塾「北村塾」を開講中。NPS=98.4、推奨度平均9.89点という圧倒的な人気を得る。著書に『なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか』(宣伝会議)。
『なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか 電通戦略プランナーが教える現場のプランニング論』(北村陽一郎著)
定価:2,200円(本体2,000円+税)
ブランド認知、パーチェスファネル、カスタマージャーニー…有名なマーケティング・フレームを現場で使うとき、何に気をつければいいのか?「過剰な一般化」「過剰な設計」「過剰なデータ重視」の3つを軸に解説。推奨度9.9の電通社内プランニング塾の内容を書籍化。