小売とメーカーの関係をアップデート カテゴリー成長で共存共栄をめざせ

マーケティング組織の世代交代に期待

――望月さんから見て、小売とメーカーの関係を進化させるにあたってどんなことが課題と思いますか。

望月:外資系の企業は一般的に、「トレードマーケティング」を型として確立しています。P&Gはその代表である一方、日本企業は「営業」機能にとどまっています。型にすると組織力は強化されますし、再現性も生まれるので、グローバルはその点で進んでいます。

組織化への意識はリテールメディアも見習うところがあると思っています。トレードマーケティングの世界では小売は「される側」ですが、これからは小売側がトレードマーケティングを意識した状態でメーカーとの取り組みにどう向き合うのかを話をしていく時代になっていくでしょうね。

井本:バイヤーの経験者に、「こういうインサイトがありますよね、こんなこと考えたことありますよね」 と聞くと「確かに」と言われることが結構あります。インサイトって潜在ニーズよりももっと深いもので、無自覚で無意識なので、言われてはじめて意識するようなところがある。ここをもっとバイヤー側から明確に、メーカーに対して言語化できるとメーカー側からも建設的な提案が出てくるのではないかと考えています。

リテールメディアはトレードマーケティングの視点からは使いやすい戦術のひとつで、切っても切り離すことができません。リテールメディアを軸にトレードマーケティングが語られ、認知されるようになると逆算的にトレードマーケティングの価値を浸透させられるのではないかと思っています。

――これから期待していることは。

井本:「流通領域に対するマーケティングというものがあるんだ」ということを、マーケティングに携わるすべての方に知ってもらいたいですね。それこそが私が人生を通じてすべきミッションだと思っています。

最近よく感じていることですが、この領域を担う人材の世代交代が進んで一世代若返ったとき、状況は大きく変わるという期待があります。

マーケティングは経験値も大事ですが、過去の成功例がいつまでも通用するわけではありません。若い人たちがインサイトを深掘りして、どんな発想をするのか。リテールメディアの活用も選択肢のひとつですが、新しい発想を持った若い人が組織で中心的な役割を担うことがゴールのひとつになると思っています。

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小売り広告の新市場 リテールメディア
望月洋志、中村勇介著

小売りに革命が起きようとしています。その台風の目となるのが、デジタル時代に登場した小売り発の新広告サービス「リテールメディア」です。その市場は、2028年にテレビ広告市場を超えると予測されています。セブン、イオン、マツキヨ、ヤマダデンキ、楽天グループ、博報堂、三菱食品、Amazon、Googleなど、小売り、大手広告代理店、ビッグテック企業から食品卸まで、様々なプレーヤーがこの新市場に熱視線を送ります。
本書はリテールメディアの定義、日米の市場の違い、国内の事例、広告主の活用例、開発支援市場まで、網羅的に徹底解説した、日本版リテールメディアの決定版です。

 

写真 商品 トレードマーケティング 売場で勝つための4つの実践

トレードマーケティング 売場で勝つための4つの実践
井本悠樹著

小売業や卸売業で仕入れを担当する「バイヤー」や、買い物客を指す「ショッパー」を対象とするトレードマーケティングに特化した、日本初の入門書。P&Gジャパンやジョンソン・エンド・ジョンソンで、トレードマーケターとして多くのブランドの商品開発や流通戦略策定に携わってきた著者の知見とノウハウを1冊にまとめました。商品が適切な売場に置かれ、店頭の売上を最大化させるためには、バイヤーのインサイトを深く理解し、その理解に基づく戦略・アイデアを立案し実行することが必要との考え方に基づき、売場で勝つために必要な考え方と具体的な実践について解説します。


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