俳優の仕事は、チームが作り上げた台本を全力で表現すること(岡山天音)【後編】


澤本さんが「この人すげえや」と感じた岡山さんの役作り

澤本:僕が書いたのに出ていただいたとき(2023年、テレビ朝日『やっぱそれ、よくないと思う。』)って、最初に監督が現場に来て岡山さんと話をしたら、「もう澤本さん、これ岡山さんの方ができてますよ」「今できてるものを最大限伸ばしていったら良くなりますね」って話をしてくれてたんです。だから書いたものについて、ちゃんと自分で解釈して、受験だと文章で書いてくるようなものを答えとして「これですか」って出してくるような回答の仕方をされる印象はあって。すごい人だなと感じてました。

この間の僕がドラマを書いたときの岡山さんは本当にそうだった。書いてるときって「こんな感じ」って思って書いてるけど、ト書きっていっぱい書くと「長い」って怒られちゃうのよ。たとえば、この人は歩くときに気持ち右足を遅めに出すって思って書いてても、それ書いてると「うるせえ」とか「それは監督の領分だ」とか言われちゃう。

岡山:難しいですよね、確かに。

澤本:それってでも監督の領分というより、実は役者さんの領分だったりもするじゃないですか。

岡山:はい。はっきり区切られてるわけじゃないですからね、そこはすごく気を遣います。

澤本:あと僕どうしても癖として台本が長くなっちゃうんで、「削れ削れ」と言われて削るんですよ。それをポンと持って行ったときに、これで書いたときの気持ちってどれくらい伝わるもんかなと思ってたら、すごいわかってくれてて「この人すげえや」って。

岡山:いやいやいや。

澤本:お世辞じゃなくてそう思った。で、その時の監督の伊勢田世山くんも「澤本さん、ちょっと思ってたよりも動きが大きいんですけど、こっちの方が良くなりそうな気がするって初っ端のテープ見て思ったんですけどいいですかね」って感じで、僕も全然いいですよって。

岡山:『やっぱそれ、よくないと思う。』のときは『ヴァンプ・ショウ』(2022年、脚本:三谷幸喜)をやってる最中だったんで、表現がダイナミックになってたかもしれないです。

全員:あはははは。

岡山:舞台中だったんで。まあそれはシャレですけど、ファンタジーに振り切ってしまうと絵空事になってしまうというか、見ている人と隔たりが生まれてしまうけど、一方でリアルにやってMAX面白さが出るお話なのかなとも、本読ませてもらった時から思っていて。なので、両方のいいとこ取りができたらいいなと思ってました。澤本さんの台本が文字の時点でコメディとしてもめちゃくちゃ面白かったので、3次元にしたときに劣化したらやだなってところは難しかったですね。

澤本:でもね、こういう人いるんじゃないかってぐらいの調整をしてくるんですよ。アニメっぽくすると、ちょっと派手すぎたり「こんな人いねえよ」ってなったりするけど、実在感をめちゃめちゃ残してきてくれてた。

岡山:難しかったですけど、すごく面白かったです。その両方の面が浮世離れしつつ、めちゃめちゃ浮世みたいな。矛盾してることをどれだけ矛盾させられずに演じられるかっていう、ダイナミズムとリアリティみたいなものをシームレスにやる面白さがあって。他にもいろいろあったんですけど。

澤本:そのときの役作りと今回、まったく違うわけじゃない。

岡山:そうですね。『笑いのカイブツ』はまた面白みが全然違いました。その瞬間のテイクでしか生まれない偶然みたいなものにどこまで瞬時に反応していけるか、どれだけその場でその瞬間の相手役の人と生まれるスパークをカメラに収められるかがすごく面白かった気がしますね。だからアクシデント大歓迎というか、家で前の日に考えてきたこととかがちょっとでもあると、自分が一観客だったら「つまらないな」「冷めるな」って思って。それがツチヤって生き物を演じる上で自分が最初に思ったことだったし、『笑いのカイブツ』というお話に対して考えたことでもあったので、澤本さんとご一緒した時とはまた全然違う感じでしたね。

澤本:その集大成がこのポスターのこの顔だったりするんだよね。

イメージ ポスター「笑いのカイブツ」
(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会

権八:そうですよね、この笑いのカイブツのポスター。でも劇中の顔はもっとすごいです。

澤本:もっとすごいよね。

権八:もっとすごいです。


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