※本記事は、月刊『販促会議』5月号に掲載されています。
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今月のキーパーソン
ユナイテッドアローズ 新宿店
DXセールスマスター
仲 希望氏
文化服装学院を卒業後、2003年4月ユナイテッドアローズに販売員として入社。関西エリアなど約10店舗を経て、現在はユナイテッドアローズ新宿店にて勤務。
気持ちに寄り添う接客術 よりよい一着を探すお手伝い
──仲さんのご経歴を教えてください。
2003年にユナイテッドアローズに入社し、その後は10店舗近くでの勤務を経験してきました。
接客業につくようになったのは、文化服装学院のスタイリスト科を卒業したことに始まります。スタイリスト科にとって、卒業後の就職先は主に、スタイリストか販売員の2択である場合がほとんど。当時の私は、あまりスタイリストとしてのキャリアを想像できなかったことから、今の仕事に就くことにしました。
入社当初は関西の店舗に配属され、気づけば接客業に携わって今年で22年目になりますね。
現在勤務しているユナイテッドアローズ新宿店での接客歴は4~5年ほど。今までの店舗は、異動や産休の関係で、1年ほどで次の店舗に移ることが多かったのですが、今の店舗はこれまでと比べても長い期間働けているので、常連のお客さまや、声をかけてくださる方がより多くいらっしゃる印象です。
──接客時に大事にしていることはありますか。
私は、お客さまの気持ちに寄り添うことを何よりも大切にしています。というのも、お客さま一人ひとりには、必ず来店の理由やきっかけがあると思っています。
例えば、旅行用に服を選んでいるお客さまであれば、旅行がより楽しくなるようなアイテム選びをお手伝いしたり。一方で、ご自身の体型に不安があったり、式典用のセレモニーコーディネートを選びに来た方には、少しでも不安を解消できるような接客でサポートできるように心がけていますね。
その中でとくに大事にしているのは、商品説明から始めるのではなく、お客さまと “会話” をすることです。お客さまの悩みや希望されているイメージを探りながら、テンポよく “会話” をして接客することが多いです。
何よりも、最終的にはお客さまのお買い物が少しでも楽しいものになってほしいと願う気持ちがあるからこそだと思います。
簡単ではない顧客視点の応対 店舗に集まる客の声がヒントに
──長く接客業に携わる中で、最近感じた変化はありますか。
ここ数年で、来店時に携帯を手に商品を見られるお客さまが非常に増えました。
携帯では、当社スタッフのスタイリングを見ていたり、インフルエンサーの紹介動画やSNS、サイトを見ている方も多い印象です。
しかし、デジタルコンテンツを見ながらも来店いただいているということは、オンラインでは買わない理由がどこかにあるはずですよね。その理由を探るためにも、前に述べた “会話” や試着の案内はより積極的に行うようにしています。接客・販売員として勤務している限り、店舗でよりよい1着を探すお手伝いをする気持ちは忘れないようにしていますね。
──初代「DXセールスマスター」にも選抜され、オンラインでのコミュニケーションも印象的です。
当社の公式オンラインストアには、スタイリング投稿を行うページがあります。投稿数とアイテムの売上実績、ページビュー数などの総計と社内の人材基準をもとに選出されるのが「DXセールスマスター」。他店舗の2名と一緒に選抜いただきました。
現在も、サイトには出勤日のスタイリングを投稿しています。撮影は三脚を立ててセルフで行っていますが、最初は自身がメディアに露出することへの葛藤もありました。もともとの性格上、自分の顔が写った写真を投稿することには、ためらいがあったんです。
でも、すべては “お客さまのため” だと発想を転換することで少しずつ慣れてきた気がします。実際にお客さまが来店した時に「仲さんのスタイリング見てます」といった声をいただくと、投稿が役立っていると実感できて、嬉しい気持ちになりますね。
撮影や投稿はいまだに不慣れな部分もありますが、何枚も撮影をして、アイテムがよく見え、雰囲気が伝わる写真を選んでいます。
それでも未だに難しいのは、洋服のシーズンが切り替わる時期でしょうか。気温や天気の変化が激しい時期は、お客さまも洋服やアイテム選びに悩まれています。お客さまの悩みを解消できる感覚をつかむのに苦戦することもあるのですが、そんな時は会話から、お客さまの生の声を拾っています。お客さまに店頭で聞くことで、色使いやリアルな着方など、投稿内容に反映できるように考えています。
「販売・接客業に正解はない」 発展途上ならではの極め方
──これまでの接客経験を通じて、印象的な場面はありましたか。
シフトに入っているときに来店してくださるお客さまの存在はもちろんですが、「どっちがいい?」と判断をお任せしてくださる時は、やりがいを感じますね。最後の選択をお任せいただけるまで、信用くださっているんだなと。日々の細やかな接客の意味を感じて嬉しい気持ちになります。
これまで長い期間接客業を行ってきましたが、「正解はない」と思っています。おすすめの仕方、言葉の選び方、言い方など……。一人ひとりに合った接客方法があって、すべて違うと感じます。だからこそ、日々の接客を繰り返していくことで極め続けたいと思っています。
そのため、これといった接客術はなく、常に模索中ではあるかもしれないのですが、何よりもお客さまのために役立つ接客を目指したいと思っています。スタイリング投稿も然り、これからもその軸に変わりはないと考えています。
月刊『販促会議』2024年5月号
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