2024年前半は、高品質の生成AIツールが市場投入されていく中で、いくつかの問題点が浮かび上がっている。また生成AIツールでクリエイティブを制作するだけでなく、人工知能を駆使して増収を図る企業事例についても、松本泰輔氏が解説する。
※本記事は月刊『宣伝会議』6月号の連載「米国広告マーケティング事情」に掲載されています。
松本泰輔氏
Coast to Coast Marketing Services 代表。AEとして約10年広告代理店に勤務後、1995年渡米。大学院卒業後、ニューヨークの広告代理店にて通信・金融・食品会社などを担当し、2005年独立。アメリカ東海岸を拠点にマーケティング、ジャーナリズム分野にて幅広く活動。2011年、宣伝会議より『フェイスブックインパクト』を共著にて発表。
OpenAI社の「ソラ」市場投入で指摘される問題点
動画生成AIツール「Sora(ソラ)」を2月15日に発表したOpenAI社は、4月15日、アジア拠点で初、海外3拠点目となる東京オフィスを開設した。ソラは、現在はまだベータ版のみのリリースで、一般公開は未定。ソラの登場に伴い「将来起こりうる人間の芸術性の質の低下」を危惧する声が出ている。フリーライター兼監督のギャビン・ナイト氏は「自分が撮影したものかソラがつくったものか見分けがつかない。広告プロの雇用機会の減少が心配」とアドエイジ誌に述べた。業界内では「ソラの完成度の高さを認め、単なるツールとして使えばいい」という意見もあり、ソラといかに共存していくかが問われている。
アンダーアーマーは新作ビデオが議論に発展
3月5日にInstagramで発表されたアンダーアーマーの「世界初のAIで制作されたスポーツCM」が大論争に発展した。
新撮なしで既存の映像を再利用した本作について、本CMのディレクターのウエス・ウォーカー氏が「AIビデオ、AIフォト、3D CGI、2D VFX、モーション・グラフィックス、35ミリフィルム、デジタルビデオ、そしてAIヴォイスオーバーを使い、3週間で完成させた」と自身のInstagramアカウントで説明。これに対し「オリジナルの動画・画像制作に携わったクリエイターの名前がクレジットされていない」と業界内から指摘があった。
オリジナルCMの版権は、アンダーアーマーに帰属しており、撮影済みの素材から新作CMを制作することは問題ではない。しかし「オリジナル制作者の名前を記載しないのは道義的にどうか」と多くのクリエイターが反発。
後にオリジナルCMのディレクター2人とスタッフの名前がクレジットに追加されたが「AIクリエイティブの扱い」に関して、一石を投じる結末となった。
…この続きは5月1日発売の月刊『宣伝会議』6月号で読むことができます。