“広告疲れ”を起こさせない Hakuhodo DY ONEはCTAから「ATA」へ…人による広告表現とAI活用

無意味なアテンションこそ意義深い

「それはやはり、人間だからこそ理解でき、共感し、表現に落とし込めるインサイトの発掘にあります」と山口氏は力説する。「ATA」は、考え方から構想したのではなく、実は事例が先行したボトムアップのフレームワークだという。

「メルカリの広告で、『ワイヤレスイヤフォンの片方をなくした』という実体験を基にして制作したクリエイティブが目覚ましい成果を挙げました」(山口氏)

片方では不便だけれど、新品を買うのはお金がかかるし、一つ余る。だが実はメルカリには、同じようなケースで片方だけのワイヤレスイヤフォンが出品されていることが多く、売る側であっても、買う側であっても、メルカリが役に立つというシーンだ。

「実際にそうしたケースに見舞われていなくとも、『あ、なるほどたしかに』という気づきがあればやはり消費者は能動的にアクションを起こすんです。これが改めてデータで実証されました」(山口氏)

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商品やサービス、ブランドのことを、生活者にどう思い出してもらえば、どう価値を感じてもらえれば、行動するか。そうしたクリエイティブこそ、「ATA」だ。博報堂でテレビCMの企画制作に長らく携わってきた山口氏は、さらに言葉をつなぐ。

「どれくらいお得か、商品にどんな特長があるか。説明・説得をして、だからあなたはこうすべき、といったメッセージを詰め込み意味にあふれた広告がCTAとすれば、ある種、ATAは対極の『無意味なクリエイティブ』です。しかし理屈を重ねなくとも、共感したり、記憶の片隅に残っていれば、消費者は行動するものだと思います。『ATA』は、『思い出させ方のクリエイティブ』とも言えます」(山口氏)

他にも、特に強い訴求を入れず、コンテンツの演出に振り切ったクリエイティブが成果を残した事例が多くあった。なぜ効果があったのか、Hakuhodo DY ONEで定性調査をしたところ、「耳に残った」「印象的だった」「面白かった」といった、従来的な獲得型クリエイティブでは見ることのないワードが目立ったという。

山口氏の話すとおり、コンテンツ力が強く印象的な広告を通じて、「商品やサービスを思い出させるような刺激が、認知してはいたが利用に至っていなかった生活者たちに響いていたのではないか」とは尾崎氏の弁だ。

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「ただ、従来型の広告を否定するものではありません。クリエイティブ一つ一つの目的を明確にした、多角的な クリエイティブプランニングが論点なのだと思います。従来型のしっかりとオファーをするものもしっかり配信しつつ、“無意味”ともとれるアテンションに特化したクリエイティブを配信する余白を用意する。といった、事業フェーズと配信戦略に基づき施策のフォーメーションを考え割合を決めることが最も大事なことと考えられます」(尾崎氏)


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