※本記事は月刊『販促会議』5月号に掲載されています。
ウェンディーズ・ジャパン/ファーストキッチン
代表取締役社長
紫関 修氏
1985年 東急ホテルチェーン入社後、ボストン大学でMBA取得。日本マクドナルドなどを経て2012年にフレッシュネス代表取締役副社長に就任。13年 社長昇格。16年から現職。
他店とは一線を画すウェンディーズならではの強み
──ウェンディーズ/ファーストキッチンの社長に就かれたのは、2016年です。それまでは他社バーガーチェーンをはじめ、数々のサービス業で経験を積んできていらっしゃいます。ご経歴が特徴的な印象です。
大学を卒業して最初に就職したのがホテルでした。私は法学部を卒業したのですが、その当時、サービス業を志す学生はかなり珍しい存在で。教授や先輩からも不思議がられていたくらいです。
ですが、私はホテルが好きで。おもてなしや自分の行動でお客さまを笑顔にできる可能性があるサービス業が好きだったんですね。いろいろと選択肢はあったのですが、自分の好きなことを選んでキャリアをスタートさせました。
ホテルで勤務しているうちに、興味を持ち始めるようになったのが経営です。金融やマーケティングなど、ビジネスを行っていくにあたって必要なあらゆる分野を学びたくなりましたね。そこで米国に渡り、MBAを取得しました。さまざまな企業の経営企画に携わってきているという経歴です。
その後日本に帰国してからは、経営コンサルタント、日本マクドナルド、ゴルフパートナー、ゼビオ、フレッシュネスを経て現在のウェンディーズ・ファーストキッチンに至ります。
他のバーガーチェーンで学んできたことはもちろんですが、「サービス業」を軸に多くの業界を経験してきたので、会社の良いところ・改善するべきところを俯瞰して見られるようになったことは、経営にも活きていると感じますね。
──さまざまな企業の経営を経験してきた紫関社長ですが、会社を成長させるために意識していることはあるのでしょうか。
経営の企画を経験してきた中で、私が一貫して大事にしているのが「得意を伸ばす」ということです。
社長という立場にかかわらず、経営に携わる人の使命は「会社を成長させていくこと」だと思います。そのためには、改革や変化が必要になるわけですが、それを行う前には「この会社の良さは何だろう」と考えることが必要です。私自身も、会社の良さを理解することには、多くの時間を費やすようにしています。
今、改革と言いましたが、改革と聞くと「良くないところを是正していく」ことだと捉える人も多いのではないでしょうか。でも、私はそうではなくて、「得意を伸ばしていくことで改革を行う」のがポリシーなのです。
良くないことをまったく改善しないということでは決してありません。意識の比重を「得意」に置くというイメージですね。つまり、この「得意を伸ばす経営」を行うためには、前提として会社の良さを理解することが必要不可欠。
そのため、まずは「良さを見極めること」を大切にしています。そのような考えがあったうえで、ファーストキッチンとウェンディーズを見たときに強みだと思ったのは、ファストフード店には稀に見る、人とのコミュニケーションや接客、おもてなしの心がある会社だということでした。
──「会社の良さ」は、どのように判断すればよいのでしょう。意識していることはございますか。
意識しているのは、社長である自分自身だけで「良さ」を判断しないことですね。必ず、社員にヒアリングを行ったうえで、伸ばすべき良いところを見極めるようにしています。
当社でも、社長就任当時には膨大な時間をかけて社員全員と話をしました。そうすると、とても興味深い結果が出たのです。それは、話を聞いた皆が皆、口をそろえて「ファーストキッチンの強みは『人』だ」と言ったことでした。「商品」と答えた社員が、いなかったのです。
店舗スタッフとしてお客さまとコミュニケーションをとったり、お客さま一人ひとりに合った接客をしたり。
そういったことが我々の良さであると考えていたとわかりました。何より、ここまで社員が同じ方向を向いていることにも驚きますよね。そうとわかれば、「伸ばすべき得意」も明確に見えてくるはずです。
ウェンディーズ、ファーストキッチンが成長するために必要なのは、「人」が起点になって生まれるサービスを伸ばすことだと確信しました。
人起点で生まれるサービスを磨く 競合に勝つことを意識した戦略
──ホスピタリティという面では、紫関社長のホテルでの経験が、―――
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