「Fビレッジ」は、なぜ人を惹きつけるのか? ファイターズ・前沢賢常務取締役から学ぶ、新時代のスポーツとマーケティング

「ファン」と共に創るボールパーク「今がベストではない」と謙虚にお客さまの声に耳を傾ける

――Fビレッジは開業1周年を迎えました。1年間で課題が出てきたと思いますが、札幌ドーム時代よりも素早く解決されていた印象です。どのようにしてそのスピード感を会社内で保っているのですか。

前沢:そもそも、札幌ドームは北海道日本ハムファイターズが所有していた施設ではないということが大きく影響していると思います。札幌ドームを所有するのは札幌市なので、何かを変えようにも自分たちの判断だけでは実現しえない。エスコンフィールドは自分たちの施設であり、運営も全部自分たちで行っています。自分たちの判断で決められるということが開業してから1年経っても、引き続き意思決定が早いと感じていただいている、一番のポイントだと思います。

――Fビレッジでは来場者アンケートやXの「#聞いてよ F ビレッジおじさん」など様々な手段で、お客さまの声を収集し、顧客満足の向上に生かしています。お客さまの期待や逆に不満の声を集める際、集める媒体や手段によって内容に違いはあるものでしょうか。

(編集部注:Xの「#聞いてよ F ビレッジおじさん」とは、XにおけるFビレッジ公式目安箱のこと)

前沢:そんなに大きくは変わらないですが、それでも違いはありますね。例えば年間シートをご購入頂いている方にだけ出すアンケートでは、年間シートをご購入いただいた方特有の不満や課題解決しなければいけないことがあります。一方でXは「#聞いてよ F ビレッジおじさん」もそうですが、どちらかというと広く一般の声を集めているもので、球場のちょっとした工夫などをご指摘いただいています。

――実際にFビレッジを運営するなかで見える課題と、Xやアンケートで集まるお客さまの声から見える課題との間に違いはありますか。

前沢:あまりないです。僕も含めて社員は皆、Fビレッジ内を歩き回っているので、来場者の方々が体験していることは全てではありませんが、大体把握しています。ですから、お客さまの声を見て納得できるところがたくさんあります。Fビレッジは「今がベストではない」と思っているので、よりFビレッジを良くしていくためには、謙虚且つ地道に改善を続けていかなければならないと思っています。

――Xでは多様な意見があると思います。運営上における改善に採用する声の取捨選択はどのように行っていますか。

前沢:基本的に最近は各部署がXなどを見ているので、各部署が直すべきだと思ったら自分たちで直しに行っていたり、改善しに行ったりしています。ただ、抜け漏れが出るので、そこは私と三谷(三谷仁志氏/現・ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄副本部長)が各部署に聞きます。現場の人たちがわかっていることは、私たちより多いことがあるので、書かれていることに関して現場の人たちに実際の状況を聞き、改善するのか、または様子見とするのか確認するようにしています。


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