「Fビレッジ」は、なぜ人を惹きつけるのか? ファイターズ・前沢賢常務取締役から学ぶ、新時代のスポーツとマーケティング

新しい取り組みには根拠がある――平日デーゲームと放送席の位置から

――多くの新しいアイデアにチャレンジされていると思っています。例えばプロ野球の1軍の試合はナイトゲームが多い中で、平日にデーゲームを行う意図を教えてください。

前沢:狙いは3つあります。ひとつは、子供たちが学校の授業の一環で来てくれること。平日のナイトゲームや土日祝日を学校に提言することは無理なので、子供たちに学校の授業としてきてもらうための選択肢は平日のデーゲームしかないのです。

もうひとつが、Fビレッジを観光地化したいという思い。観光客にとってはナイトゲームよりもデーゲームの方がありがたいという人たちもたくさんいます。

3つ目が、 アクティブシニアが来てくれるということに加えて以前のように土日祝日が休みという会社ばかりではないことから、平日のデーゲームにもマーケットはあると考えています。

――実際、2023年5月17日はナイトゲームで観客数は18,082人。2023年5月18日はデーゲームで観客数が24,580人でありました。平日デーゲームの観客数が、ナイトゲームの観客数を上回っていたので驚きました。(※編集部注:直近の平日の試合では5月14日(火)vs.埼玉西武ライオンズ戦で24,164名、5月15日(水)vs.埼玉西武ライオンズ戦で 21,836名の観客数を記録している)

前沢:日本は海外の国々と比較すると、皆の休みが集中し、余暇を楽しむ行動が特定の日時に集中しがちです。ですから、野球観戦も、特定の日や時間に集中してしまう、これまでの状況を解消し、平準化を狙おうと考えた結果だと思います。

――エスコンフィールドでは、GAORA の放送席がライトポール付近にあり、この放送席はFIGHTERS LIVE FIELDと呼ばれ、多くのファンが訪れています。FIGHTERS LIVE FIELDの経緯や意図を教えてください。

前沢:FIGHTERS LIVE FIELDは私と三谷で考案しました。設置した理由は2つあります。まず一つは、ファンの皆様と交流ができ、喜んでくれると思ったからです。放送席には、解説者として多くのプロ野球OBの方がいらっしゃいます。通常、放送席は観客席からは見えにくい場所にあることが多いため、解説者を見かけることも少ないです。しかし、コンコースに放送席を設置することで、ファンの方々と交流ができると考えました。ファイターズOBの方々は、ファンサービスも積極的に行っていただけるので、ファンの皆さんにも喜んでもらえると思いました。

また、これまでの放送席はホームベースの後ろ側にあるのが一般的でした。しかし、解説する方たちは、生で試合を見ず、画面を通じて見て解説をするケースが多いです。なぜなら、テレビ画面の方が、情報量が多いからです。それだとバックネット裏にある必要がないので、ライトポール付近に放送席を設置しました。

――すごく斬新な取り組みだと思っていました。

前沢:実はもう1個、理由があります。

野球はポール際の席のチケットは、あまり人気がなくて販売しづらいのです。例えば座席が3万席あったとします。価格販売のヒートマップのようなものを作ったら、大体ポール際が比較的売れづらいと出るはずです。これは12球場共通しています。野球というスポーツの特性がそうなっているのだと思います。だから、ポール際のお座席でもいかにお客さんに楽しんでいただけるかと考えた時に、中継ブースやブルペンをポール際に設置したのです。


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