Fビレッジが目指すものは、数値化できない
――北海道日本ハムファイターズとファイターズ スポーツ&エンターテイメントの連結ベースで2023年に営業利益36億円を達成しました。その黒字が今年の選手の補強につながるという好循環はありますか。
前沢:当然あると思います。元々チームの補強費増を図りたいという思いも大きな目的の1つで、このプロジェクトをやっていました。単純に事業サイドの独りよがりでこの球場を作ったり、Fビレッジを運営したりしているわけではない。チームと事業は両輪みたいなものなので、収益力が上がって、その収益がチームに投資されているっていうのは間違いなくありますし、至って当たり前ではないでしょうか。
―ー2023年のオフは加藤貴之投手の残留、山﨑福也投手や新外国人選手の加入など大きな補強をしました。その補強には新球場の影響が大きかったのですか。
前沢:大きいと思います。それはチーム側もよくわかっていると思います。ただ、それでもやっと他のパリーグの球団に年俸額、総額年俸が並んだぐらいだと思うので、決して突出して高いわけではないと思います。
――エスコンFについて、「アジアナンバーワン」という目標を掲げていました。エスコンFが現在から何十年も続いていく中で、ナンバーワンを維持するという面における展望があれば教えていただきたいです。
前沢:確かに、「Fビレッジはアジアナンバーワンを目指す」という広報をしたことはあります。しかし正直に言えば、「アジアナンバーワンであるか」かどうか、はどうでもよいこと。なぜなら、ナンバーワンというのは比較対象がある概念で、何か集合体の中で他と比べて一番であると言っているのです。それはどうでもいい。自分たちがこうすべきだと思ったことをやり続けて、それを受け入れてもらえる数が多くなればなるほど良いと思っています。
むしろ「北海道に来たら行ってみたい」と言ってもらえるようになりたい…とか。そういう定量的な話じゃなくて定性的な目標はたくさんあります。
【取材を終えて】
今回の取材は、社会心理学を学び、情報学環教育部に所属する者として、テレビやYouTubeなどで取り上げられる機会の多いFビレッジについて知りたいと思ったことがきっかけでした。
昨年Fビレッジが開業し、初めてエスコンフィールドに入った時には天然芝の香り、エスカレーター、選手との距離の近さなど驚くことばかりでした。今回の取材を通して、今までの野球場の常識を覆すような魅力の多いFビレッジの取り組みが、根拠に基づいたものであり、今後の常識になる可能性のある取り組みであると感じました。また、Fビレッジの奥深さを知ることができ、また行きたいと感じました。北海道日本ハムファイターズがエスコンフィールドで日本一になる日を楽しみにしています。