赤松隆一郎さんに聞く音楽とAI  AIを活用すればするほど、クリエイターとしての本質が見えてくる

赤松:石川くんと今回、この対談の機会を得たので、自分でも音楽生成AIの「Suno AI」を試してみたんです。僕が2022年に出したアルバム『祝祭』の中から「ケモノ」という歌詞を丸っと入れてみたんです。

この曲は「共同体からの逃避」と「愛」をテーマにしていて、自分の頭の中に描かれていたのは、真夜中に走っている1人の人間でした。その姿がどんどんケモノに変わっていくという漠然としたイメージを起点に歌詞を書いたのです。その歌詞を「Suno AI」に読んでもらい、そこに「ドラマチック」「ロック」「夜」という言葉を入れてみたところ、生成された曲はこんな感じに…。

(「Suno AI」を使った赤松さんの曲「ケモノ」を流す)

石川:すごいですね。

赤松:歌詞はそのままなんだけど、自分が考えた構成や譜割りとは全く違うものになっていて、意外にいいんですよ(笑)。

石川:確かに。普通に聴けますね。

赤松:「ドラマチック」「ロック」「夜」ときて、さらにここに「エレキギター」「ブリティッシュ」など加えると、また全然違うニュアンスや音がちゃんと入ってくる。その上、ジャケットもつくってくれる。

石川:わりと赤松さんのイメージに近いジャケットができているような…

赤松:まあまあそうなんですが、ちょっと違うんですよ(笑)。それで、自分が本当につくった曲は、こんな感じ。

(「ケモノ」の元歌を流す)

石川:ああ、いい曲…

赤松:AIで作った曲は、いきなりサビっぽく始まる。それは歌詞の区切り方としては、自分の中でサビと思っていたところとは違っていて。実際に試してみたら、そういう違いがわかって面白かったですね。

石川:アイデア出しには使えそう、という感じでしょうか。

赤松:AIが作ったものを聞いて、ああ、こうなるんだとわかってきて。「あなたは、〇〇〇です」と有名な作詞家の名前をいれて、「〇〇というタイトルのもと、歌詞を書いてください」と入れて何度か試しにつくっていくと、最後のほうはAIの言葉も出涸らしのようになってしまって。「これじゃなんいんだけどな、まあもういいか」というところにいきました。それは自分のプロンプトの入れ方にも問題があるのだと思うけれど、でもその途中で何度かハッとする単語は出てきました。つまり、自分だったら絶対に書かない言葉。

石川:でも、ポイントとしては的を射ている?

赤松:そう、結構いいなという。今後、その単語は使う可能性はあるかもしれないですね。

僕の周りの音楽関係者でAIを使って、ほぼAIで詞曲をつくってリリースしているという人はまだいなくて、どちらかというと、録音後のミックスや仕上げで使っている人が多いと思います。そういう点では便利だと思うし、これまで面倒だった作業をAIに任せることは今後も増えるでしょうね。一方で、曲をまるっと全部AIでつくることに関しては、まあ、それでいいと思う人はいいんじゃないかな、と思うので否定はしません。


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石川隆一
石川隆一

2018年電通デジタルに中途入社。音楽大学卒業後、レコード会社勤務を経て、AIエンジニア/プランナーとして入社。データ分析、画像処理、自然言語処理などにおけるAIのクリエイティブ応用を研究している。日本に200人しかいないkaggle Masterの一人。

石川隆一

2018年電通デジタルに中途入社。音楽大学卒業後、レコード会社勤務を経て、AIエンジニア/プランナーとして入社。データ分析、画像処理、自然言語処理などにおけるAIのクリエイティブ応用を研究している。日本に200人しかいないkaggle Masterの一人。

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