顧客の声を基に手続きの簡略化を推進
メルカリは5月22日、同社が運営するフリーマーケットアプリ「メルカリ」において、出品時のハードルを下げる新たな機能を追加した。価格を設定せずに出品できる「価格なし出品」は、購入希望者が価格を提示することで、出品者が具体的な価格を決める際の参考にできるサービス。売りたい商品の相場が分からない場合でも気軽に出品できるようになるため、休眠客や潜在需要の獲得に期待できる。2300万人以上の月間利用者数を誇るメルカリは、独自のアンケートなどを通じて利用者の声を集め、課題解決や心理的ハードルを取り除くための施策を推進している。
「価格なし出品」利用すると、価格表示が「???」の状態で出品される。商品を見た購入検討者が適切だと思う価格を提案。出品者は提案を参考に価格を決定する仕組みだ。価格が決まった商品は、価格を提案した人以外でも購入できる。
メルカリの調査では、出品時に面倒に感じる要素として「売りたい商品の相場を調べて価格を決めること」という声が多かった。特に大量の不用品を整理するためにメルカリを利用する場合、相場を調べるのに時間がかかる。販売価格を考えることが面倒という理由で出品をやめた人も多い。パーツや箱など、商品によっては参考にできるデータが見つからないケースもある。
同社広報の小林保氏は「自分で価格を決めて出品したが、なかなか売れず困っている人もいる」と話す。価格を下げて売れるまで時間がかかり、取引成立まで処分したい商品が自宅や倉庫を圧迫するケースも。価格交渉などのコミュニケーションが心理的負担になる人も多い。
これらのハードルが出品をためらう理由になっているとし、「価格なし出品」を導入。出品までに必要な行動が減ることで、より気軽にサービスを利用できるようになる。「売れるかどうか分からないが、とりあえず写真を撮って出品しておく」といったユーザーも増えるとみており、同サービスの導入によってメルカリ内の流通量が増えるだけでなく、これまでは見られなかった商品も出品されると期待を寄せる。具体的な商品名や品番が分からない商品も出品しやすくなるとしている。
購入者側も納得しやすい価格で購入できる可能性があり、双方にメリットがあるとしている。価格を提案した人以外も購入できるようにした理由について、Product Core Team Directorの菱井康生氏は「承諾しても買わないケースも考えられる」と話し、より多くの人に購入チャンスを提供したい考えを示した。
小林氏は「(メルカリは)出品が増えないことには成り立たないサービス。ハードルを下げて売れるものを増やしていきたい」と話す。同社はこれまでも、同じ出品者の複数商品を購入できる「まとめ買い」機能(2023年8月)、商品を出品する際に4つの項目を入力するだけで簡単に出品できる「かんたん出品」機能(2024年3月)など、利用者の声を基にしたアップデートや機能の充実を行っている。利用者を増やすためには、利便性向上だけでなく、心理的なハードルの撤廃も重要としており、今後も双方の改善を図る考えだ。