健康を基軸に感謝を届ける 杏林製薬の100周年企画

社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年を、企業はどのように迎えるのか。1923年に創業した杏林製薬の100周年企画を紹介する。
※本記事では月刊『広報会議』2024年6月号(5月1日発売)に掲載した連載企画「周年イヤーの迎え方」を転載しています。

杏林製薬は2023年6月16日に創業100周年を迎えた。周年期間は2023年4月からの一年度に設定し、スローガンは「健康への願いを次の100年へ。」。

「『健康を基軸としたこれまでの感謝と将来に向けた飛躍』というコンセプトのもと、100周年はゴールではなく、私たちにとっての“新たなスタートライン”であるという決意を込めました」と話すのは、経営企画部広報・IRグループの宇井綾子氏。

100周年イヤーの始まりとなる2023年4月には、キョーリン製薬ホールディングスから杏林製薬へと社名を変更した。

グラフィック ロゴ
ロゴマークの「100」は、さらに飛躍するイメージを込めた右肩上がりのデザイン。「0」は成熟した杏の実を表し、健康と今後の成長のシンボルである若葉が添えられている。また、未来に向かう時間の流れと成長を続ける姿を、色のグラデーションによって表現している。

スタートラインを体現した広告

商号変更を伝える新聞広告では、国立競技場のスタートラインでOn your marksの姿勢を取る荻原豊代表取締役社長の姿が話題となった。

グラフィック 荻原社長をはじめ、社員たちが未来へのスタートラインに立っている姿を撮影した広告
荻原社長をはじめ、社員たちが未来へのスタートラインに立っている姿を撮影した広告。社長自ら登場した企業広告はこれが初めて。

「社長自らスタートラインに立つビジュアルに多くの反響をいただきました。当初、社長以外はエキストラの予定でしたが、せっかくの機会ですので、さまざまな部署の社員に登場してもらったところ、社員からは『家族や知り合いが新聞を見てくれた』という喜びの声もありました」と、経営企画部部長の谷藤功典氏。

創業記念日の6月16日に出稿した新聞広告でも、2000年以上も成長を続けるというセコイアの木々の雄大なビジュアルに社内外で反響があったという。

「地球上で一番大きな生物であるセコイアが上に向かって真っ直ぐ成長していく姿を、これからの100年とリンクさせました」(谷藤氏)。

インターナル施策にも手応え

インターナル向け施策では、コンセプトである「健康」を基軸とした記念イベント「キョーリンヒストリーウォーキングリレー」を5月から1カ月間実施。この施策は、同社の社員一人ひとりが期間中に1日6000歩ずつ歩くと達成できる累計歩数3億9100万歩(サンキュー100年)を数値目標に設定し、チームごとに歩数を競い合うもの。

施策開始時には、荻原社長とチャレンジリーダーとして選抜された代表社員たちが、創業者・荻原廣氏の生まれ故郷からスタートする様子を動画で公開した。

「Googleフォームに各自で計測した日々の歩数を入力し、全チームの累計歩数によってすごろく上のコマを進めていける独自のシステムをイントラネットで公開しました。歩数が増えるごとに会社の歴史的なトピックが読める構成で、チームの順位も期間の途中まで随時更新し、結果は7月に開催した100周年の記念式典で発表しました」(宇井氏)。

グラフィック イントラネットで公開されたすごろくのイラスト
イントラネットで公開されたすごろくのイラスト。コマを進めるにつれて自社の歴史に触れられる仕組み。

社員2138人が228チームに分かれて参加し、目標を大幅に超える5億1433万3815歩を達成。コロナ禍により5会場に分散して開催した記念式典では上位3位と、2023年と100周年にちなんだ23位、100位にトロフィーと記念品が贈られた。

「記念式典では、スタート時の動画に登場したメンバーが舞台上で次の100年に向けた決意を宣言するという演出も行いました。『意外な人がモチベーション高く取り組んでいた』という話も耳にしましたし、楽しみながら参加してもらえたようです」(谷藤氏)。

記念式典では、同じく創業100周年を迎えた中央葡萄酒のグレイスワインで乾杯。荻原社長の発案を機に、両社の社長対談も実現した。

施策の締めくくりとして、101回目の創業記念日である2024年6月16日に、2023年までの歴史を綴った100周年史を発刊する予定だという。

「いかにインパクトを残しながら、感謝と飛躍というメッセージを理解浸透できるかに着眼点をおいて取り組んできました。社員参加型施策は手応えがあったので、次の100年のためにも、全員が一丸となれる取り組みを今後も続けていきたいと考えています」(谷藤氏)。

写真 人物 集合
総務グループは主にイベントを担当し、広報・IRグループは広告やロゴ、スローガンなどの制作や情報発信を担当した。
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