広報活動の「広告換算」あり?なし?その答えを考える

「アウトプット指標」「アウトカム指標」を明確にしよう

私がメルカリ入社後まもなく、会社・事業が現状どのような認知・イメージなのか正しく把握するためにブランド調査を実施したのですが、詳細は割愛しますが、ざっくり以下のようなファインディングスが見えてきました。

  • ・メルカリ自体の認知度は非常に高い
  • ・特にメルカリ利用者層(主に20代~30代女性層)や、IT・スタートアップ業界界隈においては、認知度はもちろん、メルカリに対する好感度・信頼度も非常に高い
  • ・一方で、「メルカリを認知しているが利用していない層」(主に40代以上が中心)も非常に多い。認知しているが利用しない理由は、「会社やサービスへの信頼度が低い」ため(=事業展開上のボトルネック)

おりしも当時(2017年)は現金出品などの不適切出品問題が世間を賑わせていた状況です。

既に高い認知度がある状況で、ただ表面的な発信・露出を積み重ねてもボトルネックの解消には寄与しません。

東証マザーズ(当時)への上場も水面下で予定されていたなかで、「メルカリを認知しているが利用していない層」「快く思っていない層」(=世論形成への影響力、声の大きさという点では実は重要なステークホルダー)に対して、広くメルカリという会社やサービスに対する見え方を変え、信頼度・共感度を上げていくこと経営的にも事業的にも重要であると考えました。

そうなると、メルカリ広報チームが優先的に関係構築すべきメディアも、メルカリ利用者層や、IT・スタートアップ業界界隈の方たちが見ているメディアというより、むしろメルカリを利用していない層が見ているメディアが注力対象となります。

そしてコミュニケーションの目的・対象が変われば、メッセージも変わります。

そもそも「簡単に売って買ってお小遣い稼ぎができる」というメルカリのコアバリューについては既に認知されている状態であり、それを重ねてもパーセプションチェンジ(認識の変化)には至りません。世の中や競合の動きを見つつ、例えば「メルカリを使うことがサステナブルである(限られた資源の循環に繋がる)」など、新たな文脈やメッセージを開発していきました。

これに伴い、見るべき成果指標も変わり、次の2点を目標として定めました。

  • ・最終的にリーチアウトしたい層との親和性が高いメディアに対して、伝えたいキーメッセージ・文脈がちゃんと届けられているか(=アウトプット指標)
  • ・その結果として(当該層における)企業・サービスに対する認識がポジティブに変わったか(=アウトカム指標)

このあたりの話は、私がメルカリ在籍時代に行ったミートアップイベントのレポート記事で解説しているので宜しければご覧ください。

スクリーンショット イベント セミナー メルカリPRセッション


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矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)
矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

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