発売直後に人気爆発「The Music」 2人のZ世代創業者が明かす成功秘話

2023年1月に「The Music」が発売した「ミュージックキーホルダー」がZ世代をはじめとした若年層の間で大きな話題になっている。レコードやカセットテープなどのデザインで、「音楽を持ち歩ける」のが、同商品の特徴だ。発売するや否や、初日に5000個を売り上げ、現当時は生産が追い付かないほど人気に火がついた。開発・販売を管理しているのは2人のZ世代。この「ありそうでなかった」商品は、なぜヒットしたのだろうか。

SHIDOMODO
共同創業者
蛭田俊輔氏

大学在学時には、マーケティングから芸術分野に至るまで幅広い分野に注力し、複合的な視点から新たな価値を生み出す企画に従事。現在は、合同会社SHIDOMODOにてプロダクトやサービスの企画・運営までを担当。

共同創業者
山本 歩氏

学生時代より価値を生み出すデザインに注力し、モノづくりや企画に従事。出版社でのデザイナー経験を経て、現在は合同会社SHIDOMODOにてプロダクトのデザインから経営企画までを担当。


写真 商品 ミュージックキーホルダー

■商品情報

商品名:「ミュージックキーホルダー(The Music)」
実勢価格:1500円(税込)
主な販路:公式ECサイト、雑貨店など

無形のものをあえて有形に戻す Z世代が「レトロ」に惹かれる理由

──まずは、「The Music」を展開しているSHIDOMODOについて、どんな企業なのかを教えてください。

蛭田:SHIDOMODOは、幼馴染同士の私と山本の2人が共同創業者として2023年3月に設立した会社です。「ミュージックキーホルダー(The Music)」の発売は2023年1月なのですが、ありがたいことに、想像を上回る初速売上を達成できたということもあり、発売2カ月後に正式に会社として立ち上げることになったという経緯です。

山本:私たちは、「The Music」がきっかけで注目していただくことが多いですが、もともとは学生時代からアパレル事業を展開していたんです。というのも、私たちの学生生活は、コロナ禍の影響でその半分以上を在宅授業で過ごしていました。その中で、幼馴染である蛭田と「何か面白いことをやりたいね」と話して始めたのが、アパレル事業。販売していた商品は、アイテムにQRコードをプリントして、好きなURLを登録することができるというものでした。要は、洋服やアイテムに自分の好きな物事を表現できるリンクを貼ることで「自己表現できるアパレルアイテム」として展開していたのです。

蛭田:ですが、アパレル事業は自分たちが思うような結果には繋がらなくて。そんなときに生まれたのが、「ミュージックキーホルダー(The Music)」でした。

──発売から1年。「The Music」はZ世代をはじめとした若年層に人気ですね。

蛭田:「ミュージックキーホルダー(The Music)」は、見た目はただのレコードやカセット、MDプレイヤーのデザインのキーホルダーなのですが、最大の特徴は自分の好きな曲やプレイリストを、そのキーホルダーに登録して “持ち運べる” ことです。最初に商品が完成したのは、大学卒業間際の冬くらいだったと記憶しています。山本が突然私の前に「こういうの面白そうじゃない?」と見せてきたのが、すでに完成された「ミュージックキーホルダー(The Music)」でした。

写真 商品 キーホルダー

──山本さんはなぜ「音楽を持ち歩く」という点に目をつけたのでしょうか。

山本:2~3年くらい前から、若年層の間でレトロなモノやコトが流行していましたよね。テクノロジーが発達した便利な時代に、あえて不便とも捉えられるものを選ぶことを好むといいますか。私自身もZ世代と呼ばれる年齢で、あらゆるものがデジタル化したことが当たり前の中で育ってきたのですが、デジタル化って、今までは有形だったものが無形になることだと考えています。

Z世代があえて不便なものを選ぶ理由は、ここにあると思っていて。つまり、無形が当たり前だったものが、有形に戻るのが逆に新しく感じるからこそ、レトロブームが起きるんだろうなと思ったのです。

そこで私が考えたのが、便利にした技術をエンタメに使えないかということでした。「The Music」の肝である “音楽を持ち歩く” を実現している技術は「NFC機能」と呼ばれる、タッチするだけで機器認証ができたり、Bluetoothのように無線で通信ができる機能です。身近なところだと交通系ICカードなどに使われている技術なのですが、この機能に目を付けたことがきっかけで完成したのが「ミュージックキーホルダー(The Music)」。「世の中を便利にし、物質を不要にした技術を用いて、あえて有形に戻す」。この考えのもと、開発しました。


写真 「The Music」専用アプリを利用してペーストすることでキーホルダーにインストールができる。
「The Music」への音楽の登録は、ユーザーが使用している音楽サブスクアプリを使用することで可能。「共有」から「コピー」を選択し、楽曲のURLを取得。それを「The Music」専用アプリを利用してペーストすることでキーホルダーにインストールができる。

「エモい」と謳わず、「エモい」と思わせるプロモーション

──発売初日に5000個。1年で5万個売り上げたと聞きました、どんなプロモーションを実施して、成果に結びついたのでしょうか。

蛭田:私は山本が最初に商品を見せてくれたときから、「これはいける!」と何となく思ったことを強烈に記憶しています。説明し難いのですが、私自身もZ世代ということもあり、自分が刺さったのであれば他のZ世代にも響くのではないかと感じたのだと思います。

とはいえ、もちろん最初は認知を獲得するための施策が必要です。発売当初から注力しているのは、SNSの活用。ですが、ここで一番気を付けているのは「決して宣伝にならないこと」です。「音楽を登録できるキーホルダーだ」ということは伝えるのですが、それ以上は見つけてくれた人の想像力に任せるといいますか。押し売りをしないことを大前提に発信しています。

山本:Z世代に商品を選んでもらうためのキーワードとして、「自分ごと化」という言葉をよく聞くと思うのですが、当商品で言うと、“想像力に任せる” という部分がまさに「自分ごと化」に繋がる要素だと思っています――

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