5月15日に、米国・ニューヨークのCIPRIANI WALL STREETにて、The One Show 2024の授賞式が開催され、各賞が発表された。
本年度は65の国と地域から2万38作品のエントリーがあり、184のゴールド、206のシルバー、280のブロンズ、1120のメリットを選出。最高賞であるBEST OF SHOWに選ばれたのは、Orange「WoMen’s football」(Marcel / Paris , Les Artisans du Film / Paris, Prodigious / Paris)。
フランスの大手電気通信プロバイダーであるOrange は、 フットボールの歴史的なスポンサーでもあり、男子と女子の両方のサッカー代表チームをサポートしている。しかし、女子サッカーはファンの間で性別による偏見に直面していた。Orange はこの偏見に立ち向かい、2023 FIFA 女子ワールドカップの機会を利用して世界的な話題を集めるべく動画を制作した。
映像で流れるのは、フランスの男子サッカーチームのスーパープレー。その最後には「この感動を与えてくれるのは、Les Bleus(フランス男子代表の愛称)だけ」というメッセージ。それに続き、「あなたたちが今見ていたのは彼らではない」というメッセージが出た後、映像は逆回転する。すると、これまで見ていた男子選手が、実は女子選手のディープフェイク映像であることが明かされる。つまり数々のテクニックを披露したスーパープレーは女子選手たちによるものだった。そして、最後に男性名詞の「Bleus」から女性名詞の「Bleues」へと書き換えられ、「Orangeはles Bleuesを応援します」というメッセージが流れる。
本作は、ONESHOWの各部門でゴールド10、シルバー3、ブロンズ3、メリット6を受賞した。
日本からは、DESIGN部門でJR グループ「My Japan Railway」が部門最高賞のBEST OF DISCIPLINEを受賞。また、GOLDには甲子化学工業「ホタメット」、大塚製薬 Webムービー「スカフィンのうた」、北國新聞 ポスター「北國新聞創刊130年記念 第107回 高等学校相撲金沢大会」、相鉄ホールディングスWebムービー「父と娘の風景」、朝日放送 ポスター「熱闘甲子園」が選出された。
ONESHOW授賞式での日本の受賞者の皆さん。
※BEST OF SHOW
BEST OF DISCIPLINE :Film & Video/Interactive, Online & Mobile
Orange「WoMen’s Football」(Marcel Paris , Les Artisans du Film Paris, Prodigious Paris)
※The One Show 2024 Best of Discipline
Brand-Side/In-House
Lazada 「An Unnecessary Love Story」(Lazada)
東南アジアを代表するE コマース プラットフォーム「Lazada」のブランドキャンペーン「Projetct Add to Life」。若い世代に向けて、不要なオンラインショッピングを愛する人々を描いたロマンティック・コメディ風の短編映画を制作。
Branded Entertainment /Moving Image Craft & Production
Sydney Opera House「Play It Safe」(The Monkeys Sydney with MassiveMusic Sydney, ARC EDIT Sydney、Revolver×Somesuch Sydney)
2023年に50周年を迎えた、オーストラリアのアイコン的存在シドニー・オペラ・ハウス。この実験的建造物への敬意とシニカルなメッセージを込めて、オーストラリア人歌手のティム・ミンチンが作詞・作曲。シドニー交響楽団をはじめ、オーストラリア・バレエ団、シドニー・フィルハーモニア合唱団 のアーティストらが参加し、象徴的な建物の内部や歴史を見せながら歌い上げる。
Creative Effectiveness
Adidas 「Runner 321」(FCB Canada Toronto , Adidas , Suneeva Toronto)
ダウン症のアスリートとして初めてアイアンマンを完走したクリス・ニキック。アディダスは、ボストンマラソンで彼をスポンサードし、ダウン症コミュニティにとって象徴的な数字である「321」をゼッケンとして提供。ダウン症ランナーの世界各地のマラソン大会への出場権を確保する取り組みを開始した。その後、世界の主要な 6 つのマラソン大会すべてで「Runner 321」を実現し、社会的な運動へと広げていった。
Creative Use of Data
SkipTheDishes「Inflation Cookbook」(Dentsu Creative Canada Toronto)
カナダのオンライン食品配達サービス SkipTheDishes は、カナダ人が手頃な価格で栄養価の高い食品を調達できるように、リアルタイムの食品価格データを追跡。食材価格の下落に基づいてレシピを推奨する食料品ショッピング ツールを提供した。全国の大手小売店と 80 以上の店舗にわたる 400 以上の主要原材料の毎週の価格変動を追跡するリアルタイム データを活用することで、業界の価格変動という複雑な課題に対処した。
Creative Use of Technology/Cultural Driver/IP & Product Design
Microsoft 「ADLaM」(McCann New York)
西アフリカのフラニ族のアルファベット書体をデジタルフォント化した試み。人口4000万人を擁するフラニ族は独自の言語を持つが、長らくアルファベットを持たなかった。その部族の言語を守るために、また人々が自らの言語でビジネスやコミュニケーションを行っていけるように、同部族のバリー兄弟は独自の手書き書体を開発。そのデジタルフォントのプロトタイプを、マイクロソフトがより最適化し、汎用化した。
Design
JR グループ「My Japan Railway」(電通)
Direct Marketing
Heineken「H150 Anniversary」(LePub Milan with Boomerang Amsterdam, Prettybird London, and MassiveMusic Amsterdam)
ハイネケンの生誕 150 周年を記念したキャンペーン。1873 年の誕生以来、綴りが間違ったり、誤用されたり、ドイツビールと間違われたり、さらには「ヒネケン」「ハネケン」「ヘネケン」と呼ばれたりしがらも、 150 年間にわたってハイネケンが世界中でどのように楽しまれてきたかを伝える。
Experiential & Immersive
Bayer Consumer Health / Claritin 「The DiversiTree Project」(Energy BBDO Chicago , CANJA Audio Culture Curitiba, Coyne PR New York, twelvenote New York Bayer Consumer Health / Claritin)
現在、米国ではあらゆる種類のアレルギーが成人の 30% 以上、子供の 40% 以上に影響を及ぼしている。その原因は、多くの公園などに植えられている、花粉を生成する雄の木。そこで、アレルギー薬のクラリチンは、花粉を放出しない雌木を植えることで花粉レベルを減少させる取り組みを実施。プログラムの初年度は、20万本以上の雌木が植えられ、花粉レベルが25%減少した。こうした施策で、650 万平方フィート以上のアレルギー対策緑地が造られた。
Health & Wellness
Dove「The Cost of Beauty」(Ogilvy UK London with Ogilvy Canada Toronto)
70% の子供たちがSNS上で有害な美容コンテンツにさらされており、5 人に 3 人の子供の精神的健康がSNSで見るものによって影響を受けているという。Doveは若者のメンタルヘルス危機に対処するための法整備を進めるキャンペーンの取り組みの一環として、摂食障害で命を落としかけた本物の少女を主人公に、有害な美容コンテンツが現実にもたらす影響を探るムービーを制作した。
Integrated/Omnichannel/Social Media
DoorDash 「DoorDash-All The Ads」(Wieden+Kennedy Portland with Superette San Francisco, Lord Danger Los Angeles and Modern Logic Los Angeles)
フードデリバリーサービスDoorDashは、2023年のスーパーボウル期間中に放送されたCMの商品(車4台から60ポンドのマヨネーズまで)を1名にプレゼントすることを発表。視聴者はスーパー ボウルのスポットで公開されたプロモーション コードを解読し、応募することができるというキャンペーンを実施。
Interactive & Mobile Craft/Music & Sound Craft /Radio & Audio-First
AB InBev, Michelob ULTRA 「Dreamcaster」(FCB New York with 456 Studios New York)
世界中で 2 億 5,000 万人以上の人々は、目が不自由なためスポーツの試合の実況を楽しめない。NBA の公式ビールブランド「Michelob ULTRA」は、視覚障害者のキャスターであるキャメロン・ブラックと協力。コートの動きを感知できる触覚伝達装置とコート上の音を体感できるオーディオシステム、AIを活用した点字の実況を組み合わせ、リアルタイム エクスペリエンスに変換する独自のテクノロジーを開発。キャメロンによるバスケットボールの中継を実現させた。
Out of Home
Coors Light「Coors Lights Out」(Rethink Toronto)
大谷翔平選手が試合中に放ったファウルボールが電光掲示板に直撃。クアーズライトの商品広告の一部が破損した。それによって缶の広告の表面には壊れたピクセルの黒い四角形の跡が残ったが、Coors Lightはこれを修正するのではなく、それを受け入れ、わずか 48 時間で「ヒット・ザ・スポット(打球直撃)」記念缶(ビールは入っていないレプリカ)を発売。この商品は発売から24時間以内に完売した。
Pharma
Eurofarma「Scrolling Therapy」(Dentsu Creative Argentina Buenos Aires with Dentsu Creative Chicago, and Dentsu Creative New York)
パーキンソン病の患者は微笑んだり、笑ったり、驚いたりする能力を失い、感情を表現できなくなるため、人間関係、コミュニケーション、生活の質に深刻な影響がもたらされる。アプリ「Scrolling Therapy 」はGoogle のTensorFlow AI プラットフォームを利用し、デバイスのカメラに接続して患者の表情をキャプチャする。こうした顔認識機能を活用することでパーキンソン病患者の病の進行を遅らせるべく顔のエクササイズを実行できるようにした。
Print & Promotional
Kraft Heinz「Heinz Ketchup Fraud」(Rethink Toronto, Kraft Heinz Toronto)
赤い調味料の代名詞ともいえるハインツのケチャップ。同社は、世界中に品質の悪いケチャップをハインツのボトルに詰め替えているレストランがあることに気づいた。それらのレストランのインサイトは、「高い品質のハインツを提供したい」ということ。同社は「ケチャップは絶対にハインツ」というブランド信念に着目、こうした行為に注目を集めるために、ハインツはケチャップ詐欺キャンペーンを立ち上げた。人々がハインツを見たらそれが実際にハインツであることを保証するよう全国のファンに協力を呼びかけた。
Public Relations
Kraft Heinz – Just Crack an Egg 「Just Date a Farmer」(Rethink New York)
2023年、米国では、インフレと鳥インフルエンザの流行のおかげで、卵の価格が 70% 上昇。クラフト ハインツの最も知られていないブランド「Just Crack an Egg」は、100 万人以上の会員を抱える農家専用の出会い系サイト「 FarmersOnly.com 」と提携。 顧客が Just Crack An Eggを購入すると、出会い系サイトのプロモーション コードを取得でき、地域で卵を生産している農家に無料でアクセス、購買できるようにした。
BEST OF NON-PROFIT
Digital Public Library of America 「Banned Book Club」(FCB / Chicago、 456 Studios / Chicago)
アメリカの保守的な政治家は、図書館員に本を棚から撤去することを強制し、黒人、褐色人種、LGBTQIA+の声を沈黙させている。その数は、2023年だけで3059冊。そこで米国デジタル公共図書館 は、アメリカで発禁となったすべての書籍の最新データベースを作成。発禁になっている地域の読者が発禁本の電子書籍版を入手できるようにした。電子書籍は、Palace 電子リーダー アプリを介して無料で閲覧できる。