『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、電通プランナー 花田礼氏が、『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』を紹介します。
コピーライターにとって大事なことは、テクニックやノウハウといったものではなく、世界に対する姿勢やまなざしであるということが一貫して伝わってくる一冊です。
そして、それは先人からも学ぶことができるということで、三島さんが影響を受けた言葉や考え方を多数紹介しているとともに、三島さん自身の言葉で、三島さんが大切にしている姿勢やまなざしを、読者に対して惜しみなく共有してくださっています。
読みながらほぼ毎ページ、良いなと思った一節をスマホのメモに書き留めていたのですが、ほんの一部をこちらにも書いてみます。
「作法はない。方法はない。それでも、心構えはある。そして、心構えで言葉は変わる。」
「本を読まない人に届けることができる言葉を僕らは書く。映画を観ない人に届けることができる映像を僕らはつくる。」
「未来を語る言葉は増えていく。だからこそ、コピーライターは、未来よりも本来を考えたい。」
「わかることとわからないことの間に大事なものがある」
「普通の言葉で普通じゃない効果を生み出す。ここにコピーを書くことの楽しさがある気がしている。」
「広告について勉強しながらも、広告業界に染まりきらないこと。勉強をしながらもわすれていくこと。突き詰めながら自由になること。世界を見つめる自分の眼をどんどん透明に澄ましていくこと。広告を学ぶということは、そうした矛盾を含んだ営み。」
「わかったような気になってはいけない。わかったような気になることは、わからないことよりも危険だから。」
「『それっぽさに』に縛られることなく、『それ』を求め続けてください。あとは自由です。」
コピーライターに限らず、広告であったり、なにか人の心を動かしたいという願いを持っている人にとって、参考になる姿勢やまなざしがとても多く書かれている本でした。
読み進めるなかで、「いま取り掛かっているあの仕事、こう考えたらもっと良くなるかもしれない」と思って、読むのを中断して企画をし始めたタイミングが幾度となくありました。この本は、僕にとって一つのクリエイティブディレクションになりました。
『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』
三島邦彦著
定価:2200円(税込み)
この本に書かれているのは、「コピーライター」という名刺を持った日から現在に至るまで、「コピーライティング」について三島氏が考え、実践してきた数々の「思考のかけら」。「言葉を考える」「言葉を読む」「言葉を書く」「そして、言葉を考える」という4つの章から構成されています。これらについて、三島氏は日頃考えていることを惜しみなく書き綴りました。しかし、そこに書かれているのは、コピーライティングの作法でも手法でもありません。さらに言うならば、書き方の技術でもありません。コピーライターとして16年のキャリアを積んだ現在の三島氏ならではのフォーム、そして言葉に向かうときの心構えです