谷山雅計×木下龍也「僕の短歌の下地には『谷山イズム』みたいなものがあるんです」

教えられるのは7割まで その先にその人独自のものが出てくる

谷山:ここからは、あらかじめ互いに用意した質問に答える形式で進めていきます。まず僕からです。

スライド 谷山さん→木下さんへの質問

木下:この本には、印象的なフレーズがいくつもあります。まずは『「なんかいいよね」禁止。』です。これは、「なんかいいよね」と思うこと自体が禁止ということではなく、何かを見て「なんかいいよね」と思ったなら、なぜそう思ったかを自分の中で深堀りしていきましょう、という意味です。この教えがずっと頭にあったおかげで、いいなと思ったものについて言語化する癖がつきました。僕は短歌の評を書く仕事もしているのですが、今でもとても助かっています。

写真 人物 個人 木下龍也

また、「エンジンとガソリン」という章には、コピーを書く時は「7割は論理」と書かれています。エンジンが論理で、ガソリンが感性。このふたつが合わさってコピーを書く能力になる、と。これは、今何かを書いている人や、これから書こうとしている人に希望を与えてくれる言葉だな、と思っています。
クリエイティブな仕事って、センスや才能の仕事というイメージがあると思うんですが、それぞれのジャンルには先人たちがいて、試行錯誤して組み立ててきたノウハウがある。だから、「自分には才能がない」と思っていても、10のうち7割ぐらいはノウハウで埋められるよ、と言ってくれているんですね。

もうひとつは、「いまの時代は、長いコピーも意識の流通の真ん中に来ることができるようになってきている」という言葉です。これは最近、短歌で広告の仕事をさせていただいている僕にとっては勇気をもらえるフレーズでした。SNSのおかげで、短い言葉ではなくても流通が可能になり、話題にしてもらうことができるようになった。コピーの長短というものが、以前ほど流通力に影響を及ぼさなくなったということですね。

さらに、この本には「コピーは描写じゃない、解決だ」とも書かれています。それが短歌でできるかはわかりませんが、少なくとも短歌はブランドイメージを高めたりすることは得意だと感じます。そんなふうに、この本を読んでみると改めて自分の下地には「谷山イズム」みたいなものがあるな、と感じますね。

パース・イメージ 商品・製品 谷山雅計著『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』

谷山雅計著『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』

谷山:『「なんかいいよね」禁止。』というのは、広告やコピーだけじゃなくて、ものを考える際のすごくシンプルな頭の鍛え方なんです。考え続けるということは、運動における基礎トレーニングみたいなもの。それを続けていくことが自分の頭を鍛えたり、それを維持していくことにつながると思う。

実は、僕はこういう考え方を5歳ぐらいから自然に続けています。例えばウルトラマンが面白いと思ったら「これはなんで面白いんだろう?」と考え続ける。そのおかげで、23歳ぐらいでこの仕事を始めた時も、比較的すぐに結果が出たんじゃないかと思っています。

それから「7割は論理」というのは、教えられるのは7割まで、ということでもある。7割をきちんと教えると、それぞれが持っている「教えられない3割」が外に出てくるんですよ。そして、その部分はその人ごとに全然違う。だから僕は、教えられない3割を引き出すために、教えられる7割をできるだけ教えようとしているんです。

写真 人物 複数スナップ 木下龍也 谷山雅計


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