ヤプリと宣伝会議は共同で、これからのインターナルコミュニケーションに関する道筋について検討する研究会を始動した。初回は4月16日に開催し、製造、金融、運輸など大手企業14社の責任者が参加。各社で注力している施策や抱えている課題について発表した。
「インターナルコミュニケーション研究会~企業行動に変革を起こし、イキイキとした組織を~」
【研究会趣旨】
多くの企業が変革を進める中、組織内のコミュニケーションを進化させるべく、アプリプラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリと宣伝会議が共同で研究会を発足。アドバイザーとして日本マイクロソフトにて20年以上にわたり国内の広報/コミュニケーション業務を統括し、現在はNECでコーポレートコミュニケーションを統括する岡部一志氏を迎え、各社の実務家と議論する。
【参加各社のインターナルコミュニケーションの課題と施策】
NEC
シニアディレクター
コーポレートコミュニケーション統括
岡部一志氏
課題
①エンゲージメントスコアと従業員の生の声との整合性分析、②幹部メンバーに発信してもらうための工夫、③オンラインの社内コミュニケーションからリアルの対話にいかに拡大していくか、④グループ全体の巻き込み方。
注力施策
約3年前からCEOによるタウンホールミーティングを毎月欠かさず開催。リアルとオンラインのハイブリッド形式で社長がメッセージを伝え、対話している。毎回1万人以上の従業員がリアルタイムに視聴する。
本研究会のアドバイザーを務めるNECの岡部氏。
NTT
総務部門 人材戦略担当 担当課長
柳 梨江子氏
課題
組織として「めざす姿」へ移行するにあたり、会社の戦略をグループ34万人の社員にしっかり伝え、浸透させること。その変化に対する人へのサポートを行っていくこと。
注力施策
エンゲージメント調査にて定期的に調査を行う一方、幹部自ら現場と双方向対話となるタウンホールミーティングなども含め実施予定。
エバラ食品工業
執行役員コーポレート本部長
上岡典彦氏
課題
KPIや指標の策定に課題を感じている。また、経営陣、従業員に能動的に参画してもらい、共感を呼び、エンゲージメントが高まる施策のつくり方を模索している。
注力施策
社内ウェブ「EBARA通信」やタウンホールミーティング、過去の自社商品を社内に展示する「エバラミュージアム」など、様々な施策を実施。特に社内向けラジオ番組「エバラジオ」に力を入れており、3年間で200名の社員が出演している。
大阪ガス
広報部 グループ広報企画チーム マネジャー
中西貴久氏
課題
エンゲージメント向上に効果的なグループ内広報施策を模索も寄与度測定が難しい。分社化に伴い各社が社内広報を取り組み始め、グループ内広報と各社の社内広報との役割分担、連携方法も課題。部員数減による負荷増も懸念。
注力施策
社長と各組織管理職との意見交換会、魅力的な会社づくりをテーマにグループ従業員とのランチ懇談会を実施。グループ報は7月に大規模リニューアルを準備中。またグループ従業員の交流の場「Daigasよもやま」を開始。
各参加者から自社の取組みや課題意識を共有。
大林組 グローバル経営戦略室
ダイバーシティ&インクルージョン推進部長
中沢英子氏
課題
企画したセミナーや座談会の録画動画の視聴回数が伸びず、全従業員にメッセージを届けられていないのが課題。より多くの従業員が興味を持つための仕組みを構築したい。
注力施策
社内の業務内容が多岐にわたることから、共有のため竣工案件の紹介や各部署の仕事の様子をイントラで伝えている。またキャリアオンラインセミナーや育児休職中の社員と会社の接点をつくる「トークカフェ」を開催している。
オリエントコーポレーション
人事・総務グループ
キャリアデザイン推進部長 兼
インクルージョン&ダイバーシティ推進室長
栢野勇一郎氏
課題
イントラネットのトップに、全社員が投稿可能な社内コミュニケーションサイトを新設したが、閲覧数が伸び悩んでいるため、興味を持ってもらう方法を模索している。
注力施策
立ち上げた社内コミュニケーションサイトを、支店ごとのニュース、イベント告知、アスリート社員の活動報告など、誰でも自由に発信・交流できる場にしたい。
カルビー
コーポレートコミュニケーション本部本部長
吉田 聡氏
課題
グローバルでのインターナルコミュニケーションをいかに進めるか検討中。インフラや言語の共通化に課題を感じている。また、工場で働く社員にとっても、イントラネットを積極的に活用できる環境を整えたい。
注力施策
経営トップが2023年から社内ブログを開設。日々の業務、週末のできごと、企業戦略の説明などをほぼ毎週投稿している。記事に対して社員がコメントする場面も増えており、双方向のコミュニケーションが生まれている。
住友ゴム工業
広報部長 平野敦嗣氏
課題
国内外の工場勤務社員のエンゲージメントを高める方法、企業理念や中期計画を浸透させる方法を模索中。組織風土改革には、部長や課長などミドル層の意識改革が必要と考える。また、限られたリソースの中で広報部が担う業務の広がりや負担増も懸念している。
注力施策
トップと社員の対話を促すタウンホールミーティング「語る場」を2023年に26回実施。また、役員と工場長が語る中期計画「My中計」動画や、紙とウェブの社内報を制作。冊子はOBにも配布した。
大和ハウス工業
広報企画部企画 アーカイブグループ
グループ長 杉田 徹氏
課題
エンゲージメント向上に対する広報の効果測定が難しい。組織の拡大に伴いインターナル施策に取り組む部署が増えて、情報発信元が増加。情報を受け取る現場の混乱や、情報が埋もれてしまう懸念を抱いている。
注力施策
ウェブ社内報をリニューアルし、冊子社内報と共に運営。閲覧タイミング・滞在時間の分析から最適な発信時間や記事ボリューム、冊子との連動などを検討・実施している。創業70周年を来年に控え、社史編纂にも注力。
東レ 総務・コミュニケーション部門
コーポレートコミュニケーション企画推進グループ
グループリーダー 浅見尚宏氏
課題
各事業拠点の全従業員に積極的なコミュニケーションを促し事業成長につなげる方法や、国内外の関係会社への対応に課題感を持っている。また公式noteを開始し、社内で起きていることを社外に伝える重要性を感じている。
注力施策
経営層と社員が対話するライブ配信を2023年にスタート。また、成果ではなく“挑戦”を称賛する「はじめの一歩賞」を実施。応募総数は190件にのぼり社員投票で決定。約3000名の社員が視聴するイベントで表彰した。
取組み課題意識の共有後、それぞれから意見をいただき進行した。
戸田建設
広報部長 佐藤洋人氏
課題
社内報に対して40~50代従業員を中心に「目新しい情報がない」といった声もあり、関心の低さが悩み。紙の社内報は休止したものの、制作の負担はあまり変化していない。また、グループ関連会社との一体感の構築も課題。
注力施策
社内報はウェブ版一本に集約。月2回の更新で半数ほどの従業員が閲覧している。また、インターナルコミュニケーション強化も意識しながら社外へのブランド力向上施策を昨年から打ち出した。ブーメラン効果で特に若手社員のモチベーション向上につながっている。
西日本旅客鉄道
デジタルソリューション本部 DX人財開発室
室長 高本浩明氏
課題
伝統的なカルチャーを守りつつ、現場での変革をMicrosoft Teamsにより双方向のコミュニケーションを促進し、新しい取り組みや考えも称賛したい。社内の活気を従業員のモチベーションアップにつなげ、組織を強化したい。
注力施策
デジタルも活用することで、社内の意思決定やコミュニケーションのスピード向上に努めている。その結果としての業務変革の実態を四半期ごとに調査し、全社員に公開。データの可視化にこだわりを持って取り組んでいる。
三菱UFJ信託銀行 経営企画部
インターナルコミュニケーション室
上級調査役 桑原 慶氏
課題
インターナルコミュニケーションが企業と従業員にどのような価値を提供できるか、その価値を測定する指標を明らかにしたい。会社情報を「発信するだけ」から、「確実に届ける」に改善する方法を模索中。
注力施策
会社情報へのアクセス向上のため従業員向けアプリをリリース。1500名超と面談し従業員の声を経営宛に報告。従業員が経営宛に施策を提言する「手挙げプロジェクト」を運営、社員と会社の「つながり」強化を目指す。
ルネサンス
執行役員マーケティング推進本部 副本部長
コミュニケーションデザイン部長
DX推進プロジェクトリーダー 平野晃浩氏
課題
本部の各部門から店舗(現場)に対して発信する情報が多すぎることで受け手が混乱し、本当に必要な情報が届かない。アルバイトスタッフと従業員の情報ツールの分散・使い分けに課題を感じている。
注力施策
2029年の創業50周年に向けて次世代を担う若手を中心に長期ビジョンを策定。Zoomによる社内ウェビナーを開催し、スタッフ同士の対話の時間を設けている。
本研究会後に懇親会を実施。意見交換を通して次回に向けた改善箇所などを深堀していく。
【総括】
発表から、経営メッセージの社内浸透や従業員の一体感の醸成、「インクルージョン」「ダイバーシティ」など新たな概念を社内に浸透させることを目的に、各社がインターナルコミュニケーションに取り組んでいることが分かった。また共通して見られた課題としては、インターナルコミュニケーションの評価指標の考え方、人事部門との役割分担、職種・勤務地・勤務形態などが多様な従業員全体を巻き込み共感を集める方法などが挙げられた。これに対して岡部氏は、「社内コミュニケーションを行う上でもマーケティング的な視点を持ち、ターゲットとする従業員層に対してどのような頻度、手段でコミュニケーションをとるか、結果をどう分析し次につなげるかを考えていくことが重要」と話した。
インターナルコミュニケーションの手法選びや目指すゴールについては、第2回以降の研究会でも深く議論していく。
お問い合わせ
株式会社ヤプリ
住所:東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー 41階
Webサイト:https://yapp.li/
メール:mktg@yappli.co.jp
TEL:03-6866-5730