「植物性のたんぱく質が片手で摂取できる、スティック状の豆腐です!」
私はこう言って、完成した「豆腐バー」のプロトタイプをセブン-イレブンさんへ持ち込みました。当時、新たなたんぱく質として注目されていた「サラダチキン」を世に広めた同社にぜひ見てほしいと思っての行動でした。その頃の当社には、セブン-イレブンさんへの採用商品が一つもない中で、ほぼ飛び込み営業のようなかたちで商談の時間をいただけたのを覚えています。
あのセブンが興味を示した! それと同時に見えた欠点
当時のMD(マーチャンダイジング)担当の方は、今よりもずっと貧弱なプロトタイプの「豆腐バー」を見て、「面白い提案ですね」と評価してくれました。また、「たんぱく質のニーズが伸びているので商品の選択肢を増やしたいと考えており、ちょうどこんな商品を探していた」ともお話しをいただいたのです。
これで日の目を見られる! と喜んだのもつかの間、「でもこのままでは発売できません」とプロトタイプの改善点を指摘されました。MD担当者さんは、この商品を「誰が、いつ、どうやって食べるのか?」という仮説を語り始めたのです。
当時のセブン-イレブンMD担当者による豆腐バーの利用シーン仮説
- サラダチキンを目指すならば、健康を意識するビジネスパーソンが朝食やランチに買って、携帯やパソコンを操作しながら食べるはず。そうであるならば、手や機器が絶対に汚れないよう液だれはしないように。
- 普段食べ慣れているサラダチキンと遜色がないように、たんぱく質は1本で10g以上摂取できるように。同じくらいの堅さ、食べ応えも必要。
- 最後まで食べ飽きないように味がしっかり付いていたほうがよい。
やっとの思いでプロトタイプを完成させましたが、また大きな壁が立ち塞がりました。「たんぱく質含有量や堅さを更に高めることなんてできるかな?」「味を濃く付けるためには調味液に浸す必要があるってこと。今よりも液だれが酷くなってしまう……」。
万事休すかと思われましたが、逆にこの指摘が社内の潮目を変えることにつながったのです。商談結果をメンバーに共有すると、「豆腐バー」にセブン-イレブンさんが本当に興味を示したのか? と皆が驚きました。きっと門前払いされると思っていたのでしょう。しかし、商品化への一縷の望みが見えたことで開発・生産メンバーの職人魂に火が付きました。指摘された課題を一緒に解決してくれる体制が急速に社内で整い始めたのです。