重要なのは「どこ」で「どう」売るか
振り返ると、「豆腐バー」のヒットはいくつもの困難と奇跡が積み重なった末の結果だと思います。その中でも最も需要な要素が「売り場」と「売り方」でした。
廃れる日本の伝統食をなんとかせねばと悩んでいる時にアメリカのスーパーで巡り合った「堅い豆腐」。さらに帰国後の私の目に留まったコンビニの「サラダチキンバー」。そこから豆腐の定義を“植物性のたんぱく源”と変更し、片手で食べられるバー状に加工することを思いつきました。そして、豆腐の生産工程を一から見直して、世界で唯一無二の製造ラインをつくり上げたのです。
しかし、単純に「豆腐の新商品」としてスーパーの豆腐売り場に並べていたら、今日の成果には結びついていなかったと感じます。既存の豆腐ユーザーではなく、手軽なたんぱく質補給を求めるサラダチキンユーザーに、コンビニという「売り場」で、新たなたんぱく源としての「売り方」を提案したことで、豆腐の新たなユーザーと喫食シーンを開拓することができたのだと考えています。まさに、この「売り場」と「売り方」が、「豆腐バー」という商品の価値を最大限に発揮することに繋がったのです。
こうしてコンビニという場所で新たなユーザーに豆腐の価値を認めてもらうことに成功しましたが、豆腐の主戦場はスーパーマーケットです。「豆腐バー」がさらに多くの人に認知され、手に取ってもらうために、販路拡大という壁は必ず乗り越えなければなりませんでした。
次の第3回では、「豆腐バー」がコンビニ以外のチャネルへどう横展開したのか、その過程と当時の戦略についてお話しいたします(つづく)。