神戸市環境局自然環境課の武田敦之担当係長は「ツヤハダゴマダラカミキリなどの外来種は、侵入初期にできるだけ根絶する必要がある」と話す。すでに蔓延した外来種は対処が難しく、費用もかかるためだ。徹底的に駆除するため、六甲アイランド内にツヤハダゴマダラカミキリを回収するための「カミキリポスト」を設置。市民が捕まえたカミキリムシを入れるポストで、神戸市が回収・駆除を行う。自治体の取り組みで市民が特定外来生物を生きたまま捕獲し、回収場所まで運ぶといった対策方法は全国初の試みだった。2022年には162匹、2023年に132匹のカミキリムシを回収できた。
ところが、2023年9月にツヤハダゴマダラカミキリが特定外来生物に指定されたことで、外来生物法に基づき、発見したカミキリムシを運搬することができなくなった。そこで同市は環境省の確認を受け、カミキリムシを運搬する際のペットボトルやポストの管理を厳重にすることを条件に、六甲アイランド内に限り再び移動が可能になった。
六甲アイランドの外に流出した可能性を懸念した同市は、2022年にBiomeによる市民参加型調査も開始。Biomeのユーザーは全国に約93万人、神戸市内にも約3万人存在している。外来種だけでなく、固有種の分布調査も兼ねて、10種類の生物を指定。参加のハードルを下げるため、クマゼミやアブラゼミなど見つけやすい生物も含めたという。
Biomeによるクエストは例年6月から8月末の夏休み期間に実施。子どもたちが参加することで自然教育につなげたい考えだ。2022年には452人が参加し、登録された生物の数は1152件だった。2023年は372人が参加し、登録数は730件。うち調査対象の情報は568件集まった。「ニホントカゲ」(96件)、「コクワガタ」(70件)といった固有種のほか、「キマダラカメムシ」(103件)などの外来種も多数発見された。
今年の調査対象の「ツヤアオカメムシ」は、森林や周辺の都市部でみられるカメムシで、本州、四国、九州、沖縄に分布している。成虫はミカン、カキ、モモなどの果樹の汁を吸い、被害を与える。夏に森林でスギやヒノキの実を食べて繁殖。増えた成虫は、秋(9月下旬以降)に森林から市街地などに分散する。農地における調査は実施しているが、都市部での調査が不足しているため、今後も市民参加型調査を継続し、分布状況などを把握することで家庭での対策を普及啓発していく。