広報による「売上アップ」「業績への貢献」はどこまで可能なのか?

そもそも広報が短期的な売上に定常的に寄与するのは難しい

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仕事柄、他社のスタートアップ企業の広報担当者の方とお話をする機会が多いのですが、よく聞くのが、「リード獲得を後押しするために、広報によるメディアへのプロモートや発信を増やす」というケースです。

マーケティングチームがリード・ユーザー獲得のためのデジタルマーケティングに注力するその一方、広報部門は、1件でも多くリード獲得に繋げるべく、とにかく事業関連の話題の発信を増やしていくという動き方です。

「面」を取るための手段として、機能アップデートや導入事例などに関するプレスリリースの配信はもちろん、オウンドメディアやSNSでの発信数を増やしたり、掲載確率を上げるために記者とのリレーション構築を頑張ったりしているケースを非常によく聞きます。

それにより、メディア側の特集企画にうまくハマって、テレビ番組やビジネス誌で大きく取り上げられて、一時的に売上貢献できることもあると思います。

他方、当然ながらメディアには紙面・枠の制約というものがあり、よほどの注目企業でも無い限り、何度も定期的に取り上げられることは稀です。

あるいは、話題性のある企業との提携や導入実績などが取り上げられることもありますが、あくまで単発の個別事例の話であり持続性という観点では疑問です。

そもそも、普通の企業においてそういった大型事例はそんなに頻繁にあるものではなく、そうではない通常の業務提携や導入、あるいは機能アップデートといった話題だけではニュースバリューが低く、掲載自体のハードルも高いのが実情です。

結論、そのような活動で売上に貢献できることもありますが、小売・飲食・エンタメなど商品サイクルが速く認知の垂直立ち上げが売上に直結する業界(前回コラム参照)を除き、不確実性が高く、持続性も限られてしまいます。

そういう意味では、短期的な売上向上に向けた露出強化は必ずしも効率的なアプローチとはいえません。活動初期は新奇性や真新しさで取り上げられるかもしれませんが、いずれ先細りになってしまいます。

もちろんニュースバリューの多寡にかかわらず、既存顧客や投資家含め、事業の進捗状況を定期的に広く発信することも広報の重要な役割ですし、導入リリースなどは営業要請などもあると思いますので、無駄な活動だとは思いません。しかしながら、これだけをやっていても大きな成果貢献には繋がらない、というのも悲しいかな、また事実であります。


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矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)
矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

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