広報による「売上アップ」「業績への貢献」はどこまで可能なのか?

成長阻害要因の排除や市場拡大に向けたコミュニケーションも、立派な事業貢献

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企業広報として事業・売上に貢献することを目指すのは間違いではありません。ただし、その方法は一つでは無いと思います。

ポイントは、どの時間軸で売上に貢献するか。

過去のコラムでも再三ご紹介していますが、私が2017年にメルカリに入社した直後、現金出品問題や不適切出品問題など、急速な事業成長の一方で、利用者の急増に伴う意図せぬ不適切利用が相次いでいる状態でした。

そこで私が取り組んだことは、次の2つがあります。

①短期的には安心安全対策の訴求や、大手マスコミとの関係性強化による事業理解促進により、事業成長の阻害要因となりえるネガの最小化を行うこと
 
②中期的には、メルカリのIPOをモメンタムとして、メルカリという企業およびフリマアプリという新しい市場に対する社会性や信頼性を高める文脈づくり・世論形成(ポジの最大化)を行うこと

これにより、結果として事業貢献(≒売上貢献)に繋がると考えました。

果たして、これらの活動が直接的・間接的にどこまで売上貢献に寄与したのか定量的に推し量ることは難しいですが、少なくとも当時の状況下で、短期的な売上向上のための目先の露出を増やすことにだけ注力していたら、いずれ限界が来ていたことは間違いなかったでしょう。

事業というものは市場があり、その市場の中で限られたリソースで競合他社よりも優位なポジションを築くために日々試行錯誤するわけですが、事業が毎年30~40%と同じペースで未来永劫成長が続くわけではありません。

メルカリの例のように、ある日突然、事業成長に伴う成長痛ともいうべきリスク事案が発生したり、社会からの軋轢が生じて成長機会が阻害されてしまったり、あるいは競争の激化により市場が飽和状態になり、成長率や獲得効率が鈍化してしまったりする(いわゆる「サチる」状態)ことがあります。

広報は経営や事業部門とアラインメント(連携)しながら、彼らの(目先の)ニーズや課題に寄り添い、コミュニケーション活動を通じて課題解決に貢献することが本義ではあります。

一方で、社外・社会との接点を広く持っている部門だからこそ、彼らには見えていない中長期的な時間軸や、社外のステークホルダーからの視点を取り入れながら、「中長期的にはこういう点が課題になるので、いまこういう手を打つべき」といった「俯瞰的な視点」で直接的・間接的に会社・事業に貢献していくことが必要ではないでしょうか。

では、具体的にどうやってそれを広報計画に落とせばよいのか?という話ですが、詳しくは次回、具体例を用いて説明したいと思います。

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矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)
矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

矢嶋聡(はね 代表取締役/元LINE、メルカリ広報責任者)

早稲田大学卒業後、ネットベンチャー立ち上げ、留学、PR会社勤務を経て、2008年にネイバージャパン(現LINE株式会社)入社。検索サービス「NAVER」・コミュニケーションアプリ「LINE」の広報・マーケティングを統括。2017年10月にメルカリに転職。グループ広報責任者として現金出品問題などのリスク対応や東証マザーズ上場、新規事業立ち上げ、大型業務提携/M&Aなどの広報を統括。2023年3月末にメルカリを退社し、7月に独立し戦略広報マネジメントに特化したPRコンサルティング会社「はね」を設立。

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