電気代高騰を逆手に取る戦略 「町の電器店」の省エネ施策

「省エネ」よりも「使い勝手」

一方、省エネ効果は限定的と捉える地域店も。東京都町田市の電器店「ライフテクトヤマグチ」の山口勉社長はメーカーが省エネ効果をアピールする冷蔵庫について「省エネよりも使い勝手が重要」と話す。家電は省エネ性能に比例して大型化する傾向があるが、エアコンと違って冷蔵庫は設置スペースが限られているためだ。また、東京都は省エネ家電への買い替えでポイントを付与する「東京ゼロエミポイント」を実施しているが、金銭的に余裕がある高齢者は電気代高騰に関心がない人も多く、若年層は省エネ性能よりも本体価格の安さを求める傾向が強いという。

冷蔵庫の訴求で大切なのは、顧客のキッチン事情に即した提案としており、同店では家電以外の困りごとにも対応するサービスによって顧客宅への訪問機会を増やし、間取りに合わせた適切な提案につなげている。顧客によっては冷蔵庫の買い替えではなく、冷凍食品を保存するための冷凍庫を追加で設置したいという要望も多い。

エアコンは「東京ゼロエミポイント」の恩恵を受けており、上位機種の「エオリアXS」シリーズがエアコン販売構成比の3割を占める。一方、顧客の半数は補助金のことを認知していないため、店側からの積極的なアプローチが必要。また、顧客の約35%が制度対象外の神奈川県に住んでいるため、DMを分けて送付する必要があるなど負担も大きいという。

「省エネ」「補助金」といった販促策は地域店以外の家電取扱店も意識しているが、同店は地域電器店ならではのサービスで効果を高めている。山口社長が「冷たいが、心温まるサービス」と称するのは、冷蔵庫が故障した顧客に無料で氷をプレゼントするという施策だ。冷蔵庫の修理中に、肉や魚など傷みやすい食材を夕飯まで持たせるため、同店は氷が入った1キログラムの袋を2つ無料でプレゼントする。「お客さまの家族も喜んでくれる」とし、その後の買い替えにもつながっているという。

山口社長は「上期(10~3月)はあまり良くなかったが、4月以降販売が伸びてきている」と手ごたえを強調。同店でもエコキュートが補助金効果で好調な一方、設置工事には時間がかかるため、故障する前の早めの買い替えを促す考えだ。


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