組織全体で挑戦する風土を醸成
明治は、国産の乳製品の魅力を伝える新ブランド「FRESH CHEESE STUDIO」を5月31日に開始した。社内新規事業を創発する取り組みの一環で、同社の社員が起案した新事業。北海道十勝のミルクを使用したできたてのフレッシュチーズや乳製品を訴求するため、店舗などを通じてメニューを提供することを検討している。6~8月の期間限定で軽井沢エリアでの実証店舗をオープンし、秋ごろに都内での本格展開を目指す。チーズを使った新メニューを開発したい飲食店に、固まり始めた乳である「十勝カリアータ」(チーズのもと)の販売も行う。
「できたて、しあわせ」のメッセージのもとに、できたての乳製品の魅力を伝える新ブランド「FRESH CHEESE STUDIO」
「FRESH CHEESE STUDIO」は、事業プランの起案者たちの「できたての乳製品にはまだ世に認知されていない、人々を感動させる魅力があるのではないか」「国産の乳製品の価値を最大限高めて世に発信することが酪農業界に貢献することにつながるのではないか」といった考えからスタートした。経営層へのプレゼンで採択され、プロダクトの開発や市場での検証を行ってきた。事業化に向けた取り組みを加速させるため、現在は起案者たちが新規事業開発の知見を持つ「ゼロワンブースター」に出向。事業開発や実証実験に取り組んでいる。
採択の理由としては、半製品であるカード(チーズのもと)とコンパクトな生産設備で、実際に食事を行う場所の近くでフレッシュチーズに仕上げることで、全国どこでも「できたて」のおいしさを楽しむことができるという新たな生産・販売モデルに挑戦する狙いがある。北海道十勝の牛乳をピックアップした理由は、「当社の乳製品事業の中核を担うエリアであり、様々な食材との組み合わせに可能性を感じている」としている。
実証店舗の第1弾として、軽井沢の「離山サロン」で期間限定レストランをオープン(完全予約制)。同ブランドのフレッシュチーズを使ったメニューを提供する。実証では「できたての乳製品が高い価値を持つものとして評価していただけるかどうかを主眼において検証を行っていく」としている。軽井沢は、食への関心が高い人が多く来訪する点や、本格展開を目指す都心部からの距離など総合的な観点から、検証に適切なエリアとして選ばれた。
本格展開後の具体的な取り組みは非公開だが、同社は「できたて乳製品の魅力を伝えることのできる販売活動を検討している」という。ブランドの価値に共感する事業者だけでなく、一般消費者もターゲットに設定している。
同社は、2021年度に社内公募メンバーが主体となった新規事業創出を目指すプログラム「mBD(meiji Business Development)」を開始。多様な人材によるアイデアを構想化して事業を立ち上げることを目標としている。
社内公募で新規事業を創出するメリットとして、「従来のビジネスの枠組みにとらわれず、社内外の技術やサービスを融合させることで、これまでにない発想や視点の新規事業を生み出すことができる」という。様々な部署から参加を募ることで組織全体での人財育成、挑戦する風土の醸成につなげる狙いもある。
2024年3月期の同社の市販チーズの売上は前年比102.2%と前年を上回った。明治北海道十勝ブランドのスライス・粉・シュレッド商品が好調に推移。今後はカマンベールを含めてチーズ全体の需要拡大、商品ラインアップの強化を図る。