広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、ロート製薬やUHA味覚糖などの広告を手がける廣瀬泰三さんです。
若手の時、会社の図書室のようなところでコピー年鑑をよく見ていた。でもある日「これを会社で見ている時点でアカンのちゃうか?」と思い、家で見るために10年分を買った。正直「高い」と思ったが、結果的には正解だった。
もちろんコピーの勉強になったのだが、それより残っているのは「嫉妬」の感情だ。読めば読むほど悔しい。コピー年鑑に載っているコピーは、今までになかった切り口だから広告として目立っていて選ばれている。つまり年鑑に載っていない切り口でないと今後は目立てないのである。
いわば、コピー年鑑は「もうやってはいけない手口」の集まりでそれは年々増えていく。その事実に愕然とした。
そして「なんでこんな面白いのを先にやんねん……」という筋違いの怒りを覚えながら読み進めると、さらに嫉妬させるコーナーが出てくる。そう、新人賞のページだ。新人賞を獲った人たちが満面の笑みでずらりと並ぶ。丁寧に生年月日付きのプロフィールまで載っている。ボクだけだろうか?「その年鑑の年」―「その人の生まれた年」の計算をして、その人がいくつで新人賞を獲ったのか?を計算していた。
「この人35歳か…ボクまだ大丈夫や」「え!?こいつ25歳!?年下やんけ!」気付けばこんな不毛な事にたっぷり時間を使っていた。我ながらアホだと思う。でも、結局年鑑にはそう思わせてくれるいいコピーが載っているからで、経緯はさておきモチベーションをあげるのにすごく役立った。
というわけで、年鑑と言えば僕にとっては「嫉妬のガソリン」である。そして今もほぼ同じテンションで年鑑を見ていることは内緒です。人は変わりませんね。
(編集部より)現在は、コピー年鑑に受賞者の生年月日を掲載していません。