悪化するネット広告の体験品質 今、メディアや広告主がすべきこととは?

デジタル広告全体に蔓延する成果主義が悪循環を生む

―なぜ、デジタル広告の体験品質は悪くなる一方なのでしょうか。

徳力:ユーザーにとって有害な広告が増えている背景には、広告主、メディア、プラットフォーマーの三者が抱える構造的な問題があり、さまざまな要素がありますが、デジタル広告全体に成果主義が蔓延していることが大きな要因だと考えています。かつてマス広告が主流だった時代において広告は、ブランドを体現するものであり、適切な媒体に適切な広告が載る仕組みがありました。

けれどもインターネットの登場により、広告の民主化が進み、誰もが広告を出せるようになりました。それ自体は良いことだと思っています。しかし、その結果として、大手企業のクリーンな広告よりも、公序良俗に反する広告や詐欺広告が優先的に表示されることが多くなりました。

公序良俗に反する広告や詐欺広告は、センセーショナルな表現や誇大広告を用いることでユーザーの注目を集めやすく、クリック率やコンバージョン率が高くなる傾向があります。また、多くのプラットフォーマーは、広告主にとって費用対効果の高い広告配信を目指しているので、クリック率やコンバージョン率の高い広告を優先的に表示するアルゴリズムを採用しています。

つまり、広告主が成果主義であればあるほど、おのずとメディアも成果が出やすい広告を求めるようになり、プラットフォーマーも品質に関わらず成果が出やすい広告を優先して表示することになります。結果として、ユーザーにとって好ましくない広告がどうしても増えることになります。

あと、日本の広告業界は、マス広告が主流だった時代の業界構造のまま、気づけばあっという間にネット広告が主流になりました。ネット広告の市場は外資系企業が主導していて、日本企業が業界のリーダーシップを確立できていないというのも、根本的な構造上の課題です。残念ながら日本はアメリカ企業に対して比較的、弱腰ですよね。もし、日本企業が米国で同じことをしたら、恐らく米国民から集団訴訟を起こされるだろうし、米政府からも激詰めされると思います。

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