コピーはいつ「完成」するのか?
杉井:コピーを書くときに、これで完成だという感覚はありますか。
杉井すみれ氏(電通 CMプランナー・コピーライター)
三島:完成という感覚はあまりないですね。これ以上考えても無理だという、ある種のあきらめのような感覚が終了の合図だという気がします。言葉の可能性は無限なので、考えようと思えばどこまででも考えられるんです。その中で完成を決めるのは、自分ではないという感覚がありますね。
麻生:僕も完成という感覚はあまりないのですが、他の人がいじりづらいなというところまでいったら、というのはあるかな。
三島:それはありますね。もっと良くなる気がするという思いは常にありますが、今のところその手がまったく思いつかないという状態になったら、ある種の完成なのかもしれないですね。
麻生:杉井さんは、完成の感覚はありますか。
杉井:あまりないです。まだ自分の眼を信じきれてないので、ある程度書けたら先輩に見せて、その尊敬する先輩が良いと言ったら完成、と区切りをつけています。
麻生:でも、自分と他人の良い悪いは違ったりしますよね。そんな時はどちらを信じる?
杉井:そこは尊敬する人の眼を信じますね。でも、少しずつですが自分のコピーを見る眼も育ってきているかも……と思う時はあります。
自分なりの学び方を見つけていく
麻生:太田さんは、どのように自分で良いと思うコピーを絞っていくのですか。
太田:並列の候補の中から絞っていくというよりは、これじゃない、これじゃないというふうにいくつも書いていきますね。
三島:トーナメントを勝ち抜いていくような感じですか。
太田:そうですね。それでも最後まで残ったものは、私もCD(クリエイティブディレクター)に聞いて決めます。
麻生:そうなんですね。僕は人に聞かないこともないけれど、そんなに頼ってはいないかもしれない。
三島:そろそろ時間となりました。最後に、再び編集後記から引用します。
自由に感じ取ることを学びとし、
それを次の言葉に込めて、
それぞれがまた世に開いていく。
そう強く願いながら作ったことは信じてもらいたいです。
皆さんが、それぞれの余白を、それぞれのやり方で埋めていってもらえれば、と思います。では麻生さん、最後にひと言お願いします。
麻生:誰かに教えてもらうのではなくて、自分なりのやり方、学び方を見つけてほしいと思います。ここにいる全員がライバルなので、一緒に頑張りましょう。皆で楽しい広告をつくっていけたら嬉しいです。
コピー年鑑2023
編集/東京コピーライターズクラブ 審査委員長/太田恵美 編集委員長/麻生哲朗 アートディレクター/関戸貴美子 発行/宣伝会議 定価:22,000円(税込)
2023年度のTCCグランプリ、TCC賞、TCC新人賞をはじめ、5000点超の応募作品の中から90人のコピーライターが選んだ広告645点を掲載。受賞作品とファイナリスト作品には、審査委員の眼力と筆力の集積ともいえる充実の審査選評を収録しました。今年の広告は、世の中に何を問いかけたのか。「言葉を読む、コピーを読み込むための年鑑」から、コピーライターたちの熱いエネルギーを体感してください。