ロッテ「ガム噛み習慣で年52億円抑制」 社会的インパクトを数値化

サステナビリティへの姿勢や取り組みに関する発信は、いまや企業価値の向上に欠かせない。そこで月刊『広報会議』では、サステナビリティについて効果的な発信をしている企業の広報担当者に、「反響のあった情報発信」やそのこだわりを聞く連載企画「広報担当者のためのサステナビリティ実践ノート」を掲載している。

 

『広報会議』7月号(6月1日発売)では、ロッテが発表した、サステナビリティの取り組みの社会的インパクトのプレスリリースについて紹介した。

 

※本記事は、『広報会議』7月号(2024年6月1日発売)の転載記事です。

ロッテは4月18日、「ガム噛み習慣による介護費抑制効果は、年間約52億円」というプレスリリースを発表した。全国の65歳以上でガム噛み習慣を有している割合を13.98%と仮定して試算。同社が「噛むこと」の普及に取り組んでいるという認知・イメージの醸成を図った。

戦後にチューインガムで創業した同社は「全身の健康と密接に関わっている“噛むこと”」を普及する取り組みを長年推進している。「歯を丈夫で健康に保つ」という新たな健康価値を生み出した、1997年発売のキシリトールガムはその代表例と言える。

また2018年に公表したサステナビリティ活動の5つのマテリアリティのひとつにも、「噛むこと」の普及などを推進する「食と健康」を掲げる。サステナビリティ推進部企画課課長飯田智晴氏は「ロッテらしいユニークなマテリアリティであり、企業成長につながるはず」と語り、その推進に意欲的に取り組んでいる。

プレスリリース「ガム噛み習慣による介護費抑制効果は、要介護3以上で年間約52億円」で活用したインフォグラフィック。「ガム噛み習慣」と「介護費」の関係、またその定量的効果が伝わりやすいデザインにこだわった。

今回の発表背景には、「『噛むこと』の普及などサステナビリティへの取り組みはすぐに効果がでる領域ではないからこそ、その社会的価値を根拠とともに可視化したい」という意図があった。中でも議論したのが、「試算するテーマの選定」だ。みずほリサーチ&テクノロジーズとともに「社会への影響」「推計可能なデータの存在」の2つの視点から検討。高齢化社会の中で関心が高まる「オーラルフレイル予防」の試算に至った。

公表時にこだわったのはインフォグラフィックの活用による、視覚的な分かりやすさ。「ガム噛み習慣」と「介護費」の関係、その定量的効果を強調できるデザインとした。またみずほリサーチ&テクノロジーズをはじめ外部の専門家からのコメントも掲載し、推計の信頼性を高めている。

今回のプレスリリース単体の効果を追うよりも「こうした発信の積み重ねが大事」だと、コーポレートコミュニケーション部広報課課長の藤原正明氏。これまでにも埼玉県富士見市との「高齢者の健康づくりに関する協定」をはじめ、自治体との協業などにつながっている。また「テーマの検討過程で『噛むこと』領域で自社が蓄積してきた研究資産を実感し、サステナビリティ戦略を見つめ直す場にもなりました」と飯田氏は振り返る。

「噛むこと」の普及の取り組みでは、2017年から他部署とも協力して、オウンドメディア「噛むこと研究室」も運営している。社会的な関心トピックと「噛むこと」を掛け合わせ、社内の部署「噛むこと研究部」の研究結果などをもとに発信。健康面における「噛むこと」の有用性を多面的に伝えている。

記事の中でも「顔のたるみや噛み合わせを改善する『ベロ回し体操』を紹介する内容」など、美容領域の人気が高いという。コーポレートコミュニケーション部広報課主査の清水成家氏は「今後も関心の高いワードと研究結果を結び付けて発信し、ウェルビーイングな生活への一助になれば」と意気込んだ。

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