社会課題の解決は、デザインが背負い続ける使命である(箭内道彦)

「AdverTimes.(アドバタイムズ/アドタイ)」は2024年6月に20周年を迎えました。2004年に新聞として創刊、2010年からオンラインがスタートし現在に至ります。
20周年の節目に際し、これまでのコラム執筆者の皆さんから寄せられた、それぞれの領域における「これまでの20年とこれからの20年」を紹介します。

箭内 道彦氏

(クリエイティブディレクター 東京藝術大学教授)

――これまでの20年間で、ご自身のお仕事の領域や関心領域において、エポックメイキングだったと思われることはなんですか

世紀を跨いだ頃、半ば破壊的な手法によって既成概念を塗り替えようとしてきた自分の仕事ですが、23年前の9.11以降は「愛」をテーマにする表現へと移行していきました。2011年以後の活動には、大怪我をした故郷の復興が加わりました。「風とロック」という会社を一度解散して「すき」「あいたい」「ヤバい」を作ったのもその頃です。2020年のCOVID19の出現は、人と人の間に生まれる溝を埋め壁を壊すクリエイティブの力を改めて強く求めました。事件や災害・事故をエポックと位置付けることに躊躇はありますが、自身の人生と見識に大きな影響を及ぼしたことは事実です。全ては変化ではなく表出。起きたことに対する反応という向き合い方は、広告を生業とする者たちの特徴的な性質の一つでもあります。

――現在のご自身のお仕事の領域において、最も関心を寄せる/寄せられるべき課題は何だとお考えですか

誤解を怖がることなく言い切れば、人類の究極の共通課題は世界平和だと思います。東京藝術大学美術学部デザイン科の2年次に「チャーミングに異を唱えよ」、3年次には「世界平和を実現するデザイン」という実技課題を学生達に出題していますが、それは同時に自分自身に突き付けられた問いでもあって。出口の見えない社会を前に進めるためには、議論や衝突の積み重ねによる対立ではなく、クリエイティブな発想がもたらす第三の答えがどうしても必要。社会課題の解決は、デザインが背負い続ける使命です。

次のページ
1 2
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ