プロジェクト開始にあたって実施した「パート・アルバイトの接客中の立ち仕事」に関する調査では、「座っての接客が許されている」アルバイトは 23.3%に留まっていることが判明。しかし雇用主が椅子に座って接客をしても「いいと思っている」割合は 73.3%にのぼり、許可しない理由については 25.6%が「なんとなく」と回答しており、理由なくアルバイト業務が“立ちっぱなし”になっている実態がうかがえた。さらに客視点でも、椅子に座って接客をされることについて 8 割近くが「気にならない、問題はない」と回答している。
「レジスタッフが使いやすい、最適化された椅子を開発することで、その少し先の未来を可視化でき、働く人が楽になるだけではなく、働く人の対する寛容性を持てる社会につながるのではないかと思いました」
そして「企業からの呼びかけだけではなく『専用のイス』も作ることで、より普及できないか?」と考えたが、そこには超えるべきハードルがあった。
一つは、日本の店舗におけるレジスペースの狭さ。日本のレジは立ち仕事を前提に設計されているためスペースが狭く、後から簡易に設置できる大きさ・軽さが重要だった。
二つ目は、導入コスト。店舗にとって売上に直結しづらい設備投資の予算は少ないため、販売コストを大きく抑える必要がある。
「実際に日本でもIKEAやコストコのような海外サイズのレジでは、スタッフが座っていることが多くあります。しかし全体的にスペースが狭い日本のレジスペースでも置けるコンパクトさ、かつ導入しやすい価格帯を考える中で、パイプ椅子だったら実現できるのではないかと思いつきました」
そして、大手椅子メーカーSANKEIに連絡したところ、「いまちょうど、工場作業者向けのハイチェア企画が進んでいる」という話から共同開発に至った。