ビジネス関連部門からの応募増
現地時間で6月17日から、フランス・カンヌで世界最大の広告賞である「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2024」が始まった。
今年のエントリー数は2万6753点。昨年の2万6992点と比較すると全体としては微減となった。一方で、各部門への応募数については、Business Transformation部門で 8%増、 Creative Commerce部門で 18%増、 Creative Strategy 部門で5%増に。ビジネス課題の解決において、クリエイティブがより幅広く活用されている兆しを見せた。
また今年はLuxury & Lifestyle部門が新設された。「ラグジュアリーなブランドや体験によるコミュニケーションを通じて、憧れのライフスタイルを具現化するような作品を表彰する」とし、ブランドコミュニケーションやソリューションが評価対象となる。
一方で、Mobile部門が廃止に。本賞のグローバルディレクターであるMarian Brannelly氏はその理由について「モバイルデバイスはあらゆるチャネルや分野の作品に組み込まれており、さらにここ数年、モバイル主導のクリエイティビティはほぼすべての部門に拡大しているため」とコメントしている。
初日は5部門が発表に
初日である17日には、Pharma部門、Health & Wellness部門、Print & Publishing部門、Outdoor 部門、Audio & Radio部門、特別賞 のLions Health Grand Prix for Good部門の結果が発表された。それぞれグランプリを紹介する。うちOutdoor 部門は2作品がグランプリに輝いた。
※掲載順は広告主名/商品名「作品名」(企画制作社名)
Pharma部門(応募数232点)
Siemens Healthineers/MRI「Magnetic Stories」
(Area 23 New York)
医療機器メーカー・Siemens Healthineersによる、子どもがMRI検査を受ける際の恐怖心を緩和する取り組み。検査を受ける子どもたちが怖がらないように、機械音と物語が連動して物語を楽しめるようなオーディオブックを制作して流した。
Health & Wellness部門(応募数1252点)
Dramamine「The Last Barf Bag」
(FCB Chicago)
タイトルは「最後のエチケット袋」を意味する。乗り物酔いなど吐き気に用いられてきた市販薬「Dramamine」が浸透する一方で、エチケット袋は使われることが減り、その存在感が薄まってきていた。そこでDramamineブランドでは「改めてエチケット袋に敬意を示しその絶滅から救う」ことに。医師や客室乗務員、吐き気止めの製造業者からコレクターまで、エチケット袋に関するユニークなカルチャーを深掘りし、エチケット袋にまつわるドキュメンタリームービーを制作した。公式サイトでは、「塗り絵」「封筒」「ポップコーン入れ」など、エチケット袋の新たな用途を提案する商品なども販売した。
Print & Publishing部門(応募数734点)
Coca-Cola「Recycle Me」
(Ogilvy)
コカ・コーラはリサイクルのためのアクションを呼びかけるべく、特徴的な赤い缶をつぶした際のいびつなロゴをグラフィック広告に起用。消費者の行動を促すようにデザインされている。
Outdoor 部門(応募数2053点)
※2作品がグランプリを獲得
Magnum /Magnum Ice Cream「Find Your Summer『Stairs』『Corner』『Doorstep』」
(LOLA Mullenlowe)
「Doorstep」
アイスクリームのブランド・Magnumによる、冬場にアイスクリームを訴求するための広告。わずかな太陽を浴びながらアイスを楽しむ人々の様子を撮影し、ポスター広告や雑誌広告として展開した。
同時にデジタルサイネージでも企画を展開。太陽の位置のリアルタイムデータを活用して、街中で日が差している場所をトラックし、その場所のサイネージに広告を掲出した。さらにサイネージにはビーコンが設置されており、キャンペーンのオリジナルアプリをダウンロードしている人が近付くと、最寄りのMagnumのショップでアイスを割引で買える仕組みになっている。
Webムービーも展開。
Pedigree「Adoptable by Pedigree」
(Colenso BBDO)
「ホームレスの犬をなくす」というブランドのミッションを掲げるドッグフードメーカーのペディグリー。保護犬の里親探しに2008年から取り組んでいる。
活動を促進するために、1枚の保護犬の写真からスタジオで撮影したような高品質の画像を生成できるAIシステムを開発。画像はそれぞれの犬の毛の色や体の特徴などを忠実に反映するように制作した。できた画像はペティグリーのサイネージ広告でモデルとして起用しており、ブランド広告が里親探しとしても機能する仕組みになっている。
また位置情報データを活用し、それぞれの犬にとって公園までの距離や世帯規模などが合った場所に広告を表示。そして里親にもらわれた保護犬は、サイネージ広告には表示されなくなる仕組みとした。
Audio & Radio部門(応募数759点)
Specsavers/Specsavers Hearing Tests「The Misheard Version」
(Golin)
メガネの小売りチェーンであり、視覚や聴覚の検査も実施しているSpecsaversによる、聴覚検査の受診を促進するキャンペーン。よく聞き間違えられることで有名な、リック・アストリーの大ヒット曲『Never Gonna Give You Up』を、あえて聞き間違えられたバージョンの歌詞で再収録。特に説明もせずネット上にアップし、聞いた人が自分の聴力に疑問を抱き、検査を思い起こすように働きかけた。
特別賞 Lions Health Grand Prix for Good
UN Women 「Child Wedding Cards」
(Impact BBDO)
パキスタンは18歳未満で結婚する少女が世界で6番目に多い国だという。UN Womenは、パキスタン全土での児童婚をなくすために、パキスタンの国会議員あてに、5歳から15歳までの少女が描いた架空の子どもの結婚式への招待状を送付。多くの国会議員が反応し、社会的な課題として児童婚が改めて認知されるに至った。
2日目はIndustry Craft部門、 Digital Craft 部門、Film Craft 部門、Design 部門、Entertainment部門、Entertainment for Gaming部門、Entertainment for Music 部門、Entertainment for Sport部門の発表が予定されている。